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鈴木祐司「メディアの今、そして次世代」

「中高年向け」テレ朝、視聴率2位の裏で深刻な事態…バラエティ壊滅的、広告収入低迷

文=鈴木祐司/次世代メディア研究所代表

 しかもドラマのテーマは圧倒的に刑事ドラマが多い。ハプニングと謎解きのストーリー展開が、多くの視聴者を魅了するジャンルだからだ。全69枠中50枠を占めている。やはり4本に3本だ。次に多いのが医療ドラマ。『ドクターX』『DOCTORS』で6枠を占めた。人の生き死にかかわる緊迫した物語になりやすく、やはり視聴者に人気がある。これら鉄板ネタで56枠・8割強が占められている。高視聴率の背景には、こんな戦略があったのである。

バラエティという不安

 
 ドラマと対照的なのがバラエティだ。

 雨上がり決死隊がMCの『アメトーーク!』、タカアンドトシの『お試しかっ!』、ロンドンブーツ1号2号の『ロンドンハーツ』など、一世を風靡し視聴率もとったバラエティはあった。ところが近年、GP帯で高視聴率を誇る番組はめっきり減ってしまった。

 ビデオリサーチが発表する週間高視聴率番組10のバラエティ部門を見てみよう。17年度にランク入りした番組は、全体で529本あった。そのうち首位は日テレで400本。占有率は76%に達した。2位は75本のTBS、14%を占めた。そして3位は30本・6%のNHK。残念ながらテレ朝は18本・3%ほどにすぎなかった。しかも18本の大半は2~3時間の特番か、日曜午後の番組。GP帯の定時番組は、数えるほどしかランクインできなかったのである。

 この傾向は、今年度第1四半期でもあまり改善していない。全体で130本がランクインしたが、テレ朝は9本7%にとどまった。不定期で放送される『所&林修のポツンと一軒家』が3回ランクインしたために、同局の占有率は躍進したように見えるが、今春の改編による効果は、実際にはほとんど出ていない。同局バラエティの抱える問題は、かなり深刻といわざるを得ない。

視聴率と広告収入

 
 テレ朝の決算を振り返ると、ピークは12~13年度だった。それまで連結・単体ともに、売上も営業利益も大幅に伸ばしていた。ところが14年度以降のペースは鈍化に転じ、営業利益では単体で減益が出始めた。12~13年度の勢いは失われ始めていたのである。

 最大の要因は、前述のように視聴率が不調に陥っている点だ。これに連動して広告収入が変化している。10~13年度の4年間では、250億円近く増えていた。1年当たり60億円以上の増収だ。ところが14~17年度は、年間3億円ほどの微増ペースにとどまっている。成長ペースは20分の1まで落ちている。

 ここで要注意は、フジとの関係だ。

 G帯視聴率は12年度以降、フジをかわしている。しかも両局の差は年々広がっていた。ところが広告収入はなかなか逆転せず、17年度でようやく追いついた。年間視聴率で2%も差をつけて、広告収入がようやく同じ水準になったことになる。

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 好調なドラマも刑事モノやシリーズドラマが多く、視聴者の過半は中高年だ。ところが広告主は若年層を重視する。世帯視聴率は低いが若年層が多いフジの広告収入が比較的多く、世帯視聴率は高いのに若年層で少ないテレ朝が広告収入でもたついた理由がここにある。

 世帯視聴率だけで見ると、テレ朝は民放2位で順風満帆に見える。ところが内実は、その世帯視聴率でも下落傾向にある。ましてや広告収入で見ると、中高年の占める割合が高いために、収入は視聴率ほどとれていない。

 表面的な視聴率で、“恍惚”としてばかりはいられない。広告主のニーズである若年層対策はどうするのか。視聴率自体の下落傾向にどう対応するのか。同局の“不安”も、待ったなしになりつつあるといわざるを得ない。
(文=鈴木祐司/次世代メディア研究所代表)

鈴木祐司/メディアアナリスト、次世代メディア研究所代表

鈴木祐司/メディアアナリスト、次世代メディア研究所代表

東京大学文学部卒業後にNHK入局。ドキュメンタリー番組などの制作の後、放送文化研究所、解説委員室、編成、Nスペ事務局を経て2014年より現職。メディアの送り手・コンテンツ・受け手がどう変化していくのかを取材・分析。特に既存メディアと新興メディアがどう連携していくのかに関心を持つ。代表作にテレビ60周年特集「1000人が考えるテレビ ミライ」、放送記念日特集「テレビ 60年目の問いかけ」など。オンラインフォーラムやヤフー個人でも発信中。
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Twitter:@ysgenko

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