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木村隆志「現代放送のミカタ」

『この世界の片隅に』が「希少価値の高いドラマ」である理由…なぜ視聴者は深く感情移入?

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日曜劇場『この世界の片隅に』|TBSテレビ」より
 原作漫画とアニメ映画版のヒットに加え、「夏に戦時中の物語を放送する」という挑戦作だけに、スタート前から話題を集めていた『この世界の片隅に』(TBS系)。


 視聴率は、10.9%、10.5%、9.0%、9.2%、8.9%(ビデオリサーチ、関東地区)と2ケタ前後で推移。「2ケタで御の字」といわれるなか、当作が放送されている『日曜劇場』は視聴率15%前後をキープする民放トップの枠だけに、数字上は成功とはいえないだろう。

 一方、視聴者からの評判は、「内容も俳優も朝ドラっぽい」「現代パートが邪魔」などの批判と、「心温まるやり取りに癒される」「キャストがハマっている」という称賛で、まさに賛否両論。ただ、前回放送の5話では、北條すず(松本穂香)、北條周作(松坂桃李)、水原哲(村上虹郎)の複雑な心の動きが描かれるなど、回を追うごとに俳優とキャラクターが一体化し、「脚本を手がける岡田惠和の筆が乗ってきた」という印象も受ける。

 視聴率低迷の原因はなんなのか? どんな狙いがあり、どんな誤算があったのか? じっくり紐解いていく。

女性中心の物語と『日曜劇場』のミスマッチ


 低視聴率の原因は、『日曜劇場』とのミスマッチに尽きる。この2年間を振り返ると、『日曜劇場』は『ブラックペアン』『99.9 –刑事専門弁護士-』『陸王』『小さな巨人』『A LIFE ~愛しき人~』を放送。それ以前も、『下町ロケット』『半沢直樹』などの池井戸潤原作ドラマで“男同士の熱い戦い”を描いてきた。

 それだけに、女性たちを中心に描く『この世界の片隅に』と『日曜劇場』の視聴者層とのマッチングには疑問が残る。家事や人間関係、夫や幼なじみなどの男性像が女性目線で描かれているだけに、しっくりこない男性視聴者は少なくないだろう。

 キャストも、松坂桃李、村上虹郎というど真ん中のイケメンをそろえた男優に比べ、尾野真千子、二階堂ふみ、伊藤沙莉ら女優は演技力重視のセレクト。ヒロインの松本穂香も、美しさより役柄との相性で選ばれているように、全体的に女性視聴者向けのキャスティングといえる。「朝ドラっぽい」といわれるのは、このような女性目線によるものではないか。

 もともと、高視聴率を連発する『日曜劇場』が唯一苦手としているのが夏の時期。2017年夏の『ごめん、愛してる』、2015年夏の『ナポレオンの村』、2014年夏の『おやじの背中』が全話平均視聴率1ケタに沈み、2016年夏の『仰げば尊し』も10.5%にとどまった。毎年、『日曜劇場』らしい“男同士の熱い物語”ではなく、さまざまな作風でチャレンジしているが、視聴率という結果は残せていないのだ。今夏も作風こそ異なるものの、同じ道を歩んでいるのかもしれない。

 ただ、すでに多くの人々がわかっているように、視聴率はリアルタイム視聴のみを切り取った限定的なデータにすぎない。作品の質との関連性はほぼないだけに、低視聴率報道にとらわれず、みなさんの目で見極めてほしいところだ。

生々しい濡れ場を“お約束”に


 前述した女性目線という点で際立っているのは、ロマンティックで生々しい濡れ場。すずと周作のキスシーンがたびたび描かれたほか、5話では水原がすずに頬を寄せて、「すずはぬくいのう、やわいのう、あまいのう……」とキスを迫る色気たっぷりのシーンがあった。いずれも「イケメンが優しく女性をリードする」という構図であり、当作におけるお約束シーンとして女性視聴者を喜ばせているのは間違いない。

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