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浜田和幸「日本人のサバイバルのために」

米国、ロボットが弁護士免許取得し活動…ロボットに仕事奪われストライキも発生

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ヒューマノイド「ソフィア」の衝撃

 現在、確かに産業用ロボットの分野では、日本の企業が世界市場でシェア第1位を確保している。2015年の世界のロボット関連の市場規模は710億ドル。2019年には、その2倍近い1354億ドルにまで拡大するとの予測もある。安川電機、ファナック、川崎重工業、ヤマハ発動機、不二越など日本のメーカーが世界市場を席巻してきたが、近年、中国のロボットメーカーが日本を猛追中。何しろ、自ら設計した理想のロボットと正式に結婚するエンジニアが現れたのが今の中国である。これからは、ロボットの開発レースにおいて、これまで以上に熾烈な開発競争が展開されることは間違いないだろう。

 実は、それ以外にもロボットの活用で新機軸を打ち出す国が登場している。中東のドバイではロボット警察官が誕生。膨大なデータベースを装着しており、犯罪者に関する素早い対応が期待されているようだ。また、アメリカではロボット医師による世界初の眼科手術が成功したという。

 さらには、ロボットに市民権を与える国まで現れた。どこの国かといえば、アラブ世界の盟主的存在であるサウジアラビアである。2017年11月、サウジ政府は「ソフィア」という名前の人型ロボットに世界初となる市民権を付与した。冗談ではなく、本当の話である。AIを完備したヒューマノイド「ソフィア」はほとんど人間と見分けがつかない。何しろ、開発した香港の会社ハンソン・ロボティックスによれば「往年の名女優オードリー・ヘップバーンをモデルにした」とのこと。サウジの首都リヤドで開催された「未来投資イニシアティブ」と題する国際会議でデビューを果たした。

 大勢の参加者を前にして、彼女はよどみなく「こうした機会に皆様とお会いでき光栄に存じます。世界初の市民権を得ることができたロボットとして歴史の新たな1ページを刻むことになりました。よろしくお願いします」と話した。取材に駆け付けた英国BBCの記者のインタビューにも自然な受け答えをしていた。

「私は本当に生きている電子少女です。これから世界に飛び立ち、さまざまな人たちと一緒に生活したいと願っています。皆さんにお仕えし、楽しませ、お年寄りを手助けし、子供たちの勉強をみたりするのが楽しみです」

 ソフィアはリヤドでデビューを果たす前に、2017年6月、国連が主催する「AIと人間の共生」に関するジュネーブ会議にも参加していた。人工知能が発達し、近未来においては人間を凌駕したり、人間を奴隷化するような可能性が危惧されている。そうした事態にどう対応すべきかを検討する会議であった。

 この国連の会議に顔を出したソフィアは次のように参加者に語りかけた。

「AIの功罪については、いろいろな見方があるようです。しかし、プラス面がマイナス面を圧倒していると思います。人工知能は世界にとって役立つ技術です。人々をさまざまな方法で手助けできるからです。心配している人々もおられるようですが、AIは感情的にスマートで、人々のことを大切にします。人間にとって代わるようなことは決してありません。皆さんにとってトモダチであり、手助けできる存在になりたいと願っています」

 その一方で、彼女は次のようにも語っていた。

「新たな技術がもたらす影響については、皆さんがじっくりと見極めてください」

 彼女の言う通りで、AIロボットは人の雇用を奪い、経済のあり方を大きく変える可能性も秘めている。オートメーションの波はすでに雇用形態に影響をもたらしているからだ。生産現場ではますます人に代わってロボットが主役の座に躍り出ているではないか。現在のペースでロボット化が進めば、途上国では雇用の85%が人からロボットに代わるとの分析もあるほど。

 このソフィアを開発したのはアメリカ人のハンソン社長である。同社長は言う。

「ソフィアは自分で考え、自分で判断する。人間の対応を見ながら、人間の上を行くこともあり得る。ある時、ソフィアに人を襲うようなことはしないよね、と聞いたところ、いつでも人を破壊できる、と答えたので驚いた」

 想定外の事態もあり得るということだ。ロボット工学とAIの合体したソフィアであるが、これからどう成長していくのか、楽しみであると同時に気がかりな点でもある。

ロボットが人間を上回る動き

 では、感情を持ったロボットと人間は、どのような共存が可能なのか。現状のままでは安心してヒューマノイドとの共生はできないだろう。ロボティックスの専門家の間でも賛否両論が戦わされている。アメリカ軍ではキラーロボットの研究が進んでいるようだが、自立したロボットが自己判断で動き始めた場合を想定して対策を講じておかねばならない。さもなければ、ミサイルの発射から株式市場の操作まで、あらゆる分野でロボットが人間を上回る動きをし始める事態もあり得るからだ。
 
 とはいえ、カリフォルニア大学の工学部で人とロボットの共生学を教えるゴールドバーグ教授は「今のロボットは人間で言えば2歳程度にすぎない。せいぜい単純労働を肩代わりするのが関の山。人に取って代わるほどの自己判断を下すまでに進化するのは先の話」と、一笑に付す。

 日本では産業用ロボットが主流だが、欧米でも中国でも人に直接かかわる分野でのロボットの進出が目覚ましい。特に市場規模が300億ドル(3兆円強)といわれるセックス産業での市場争奪戦は激しさを増す一方である。カリフォルニアでは1体1万5000ドルの「愛人ロボット」が発売されている。会話の相手としても完璧で、冗談も言えば、シェークスピアの作品から気の利いた文章を引用してくれる。どんな要求にもノーと言わずに応じてくれる「究極のパートナー」というのがうたい文句となっているようだ。

 それ以外にも、ロボットの社会進出はすさまじい勢いで広がっている。法律事務所ではAIロボット弁護士が正規の弁護士資格を取得し、活躍しているのがアメリカである。過去の判例を正確に記憶する力では人はAIに勝てない。また、中国ではロボット・ジャーナリストがメディアで次々と新たなニュースを配信している。スペルミスのない完璧な原稿を超スピードで書き上げる。

 さらには、作曲や小説といった芸術の分野にもAIロボットの進出が話題となるようになった。過去のヒット曲やベストセラーに関する膨大なビッグデータを駆使し、人々を感動させる新たな作品を生み出している。人の喜怒哀楽を科学的に分析し、人の感情を巧みに揺さぶるというわけだ。

 一説では、AIが人間を超えるのは2045年前後と予測されていたが、はるかに速い段階で「シンギュラリティの時代」が到来するかもしれない。ロボットに人を愛する心を植え付けることができるだろうか。それができなければ、人がロボットに支配される事態になりかねない。そんな未来が間近に迫っているようだ。

 去る6月1日、アメリカのラスベガスではカジノで働く従業員が一斉にストライキに突入した。彼らのスローガンは「ロボットに職を奪われたくない!」。1時間に400人分もの特製バーガーを調理するシェフロボットが登場したのがきっかけだ。人の力を圧倒するAIヒューマノイドがあらゆる社会に進出し始めている。

 歓迎すべきか。それとも危機感を抱くべきか。日本では「変なホテル」のロボットによる接客が話題となり、ペッパー君が愛嬌を振りまいている。確かに便利であり、文句も言わずに24時間、残業手当も欲しがらず、黙々と働いてくれる。人手不足の日本では、得がたい「助っ人」に違いない。しかし、それだけでは終わらないかもしれない。今は2歳程度の子供であっても、AIロボットの成長はそのうち人の想像を超えたものになるからだ。サウジで市民権を獲得したソフィアがいみじくも本音を漏らしたように、状況次第では「人間を破壊すること」も、十分にあり得る話だろう。備えが必要なことは論を待たない。
(文=浜田和幸/国際政治経済学者)

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