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松村太郎「米国発ビジネス&ITレポート」

米国、子どものスマホ中毒対策が社会的課題に…若者にとって唯一頼れるデバイスに

文=松村太郎/ITジャーナリスト

制限ではなく「褒める機能も」

 子どもに対するテクノロジーの制限は、どちらかというと厳しい姿勢が中心だった。このアプリは使ってはならない、夜9時以降はネットワークにつながらないようにするなど、基本的には禁止と制限をシステムとして課して守らせる、というツールが主流だ。

 Appleはこれをフォローすべく、なぜ使いすぎが良くないのか、何を身につければ良いのか、といった本質的なライフスタイルとテクノロジーの関係について家族で話し合ってルールを決めるべきだとしている。しかし、大人も含めて、テクノロジーの使いすぎの状況を直すためには、どうしても「強制的に」制限するしかなかったのも事実だ。

 そこでT-MobileのFamily Modeアプリでは、制限を課すだけでなく、上手くルールを守れたら「褒める」機能を取り入れた。例えば、家事の手伝いをしたらアプリの制限を1時間解除してあげる、早く寝られたら明日は日中制限なく使って良い、今日は夜更かししても良い、といった具合で、制限を解除するというかたちでリワード(報奨)を与え、褒めることで、制限ばかりではない管理の方法を与えたのだ。

 ご褒美やお菓子やおもちゃではなく、スマホやタブレットを使える「時間」ですまされることに子どもが気づくかどうか、という別の問題もある。1時間の制限解除で親がお茶を濁しているのではないか、と指摘されると弱い。一方で、それだけ、テクノロジーに触れる時間は際限なく伸びており、ゲームやコミュニケーションの唯一の窓口がスマホやタブレットである、ということを如実に表しているともいえるだろう。

まだまだ、始まったばかり

 これまでテクノロジー企業は、ユーザーの時間やデータを広告価値に変え、これを世界中に展開してビジネスを行ってきた。スマホがテレビやパソコンに比べて弱い存在だった時代は、いかに長い時間使ってもらい、頼れる存在となるかが焦点だった。

 しかし、特に途上国と若い世代を中心に、スマホはほぼ唯一の頼れるデバイスとして認知され、もっとも長い時間を費やす対象となったのだ。こうして市民権を得たスマホに対して今、行き過ぎだとして立ち止まるよう要請が出てきた。これに対して、テクノロジー企業は、制限機能こそ用意したが、もちろん本望ではないし、ユーザーとしても生活インフラの一角を担う存在になったスマホを、もはや手放すことができないだろう。

 そうした流れから、スマートウォッチや音声アシスタントなどの新しいテクノロジーは、スマホというデバイスやその画面に頼らない方法として、位置づけることができる。その点で、テクノロジーの使いすぎの議論は、起きるべくして起きており、テクノロジー発展の過程で予想されたトピックだった、と考えられる。
(文=松村太郎/ITジャーナリスト)

松村太郎/ITジャーナリスト

松村太郎/ITジャーナリスト

慶應義塾大学政策・メディア研究科卒業後、ジャーナリストとして独立。テクノロジーとライフスタイルの関係を追いかける。2011年より8年間、米国カリフォルニア州バークレーに住み、テクノロジーの震源地であるサンフランシスコ・シリコンバレーを現地で取材した。
学校法人信学会 コードアカデミー高等学校

Twitter:@taromatsumura

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