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『西郷どん』屈辱の視聴率1桁台転落の可能性も…歴史の流れがまったく見えないダメ脚本

文=吉川織部/ドラマウォッチャー
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 鈴木亮平が主演を務めるNHK大河ドラマ『西郷どん』の第32回「薩長同盟」が26日に放送される。前々回の第30回では平均視聴率を自己ワーストの10.3%(関東地区、ビデオリサーチ調べ/以下同)にまで下げ、1桁台陥落目前かと思われたが、西郷吉之助(鈴木)と坂本龍馬(小栗旬)とのかかわりにクローズアップした前回は11.0%にまで戻し、ひとまずピンチを乗り切った格好だ。

 第32回で扱われる薩長同盟の成立は、“あり得なさ”の点からも、その後の歴史に与えた影響力の大きさにおいても、「大事件」と言ってよい。このドラマにとってもヤマ場のひとつであることは間違いなく、ここをどう描くかを楽しみにしている視聴者も少なくないだろう。そこで、放送を前に第31回の内容を振り返っておこう。

 吉之助は、龍馬が行き場をなくして困っていることを知り、薩摩に連れて帰る。やがて龍馬は、吉之助が幕府を倒そうと考えていることを知り、「自分が薩摩と長州の手を結ばせてやる」と提案する。そして、さっそく長州の桂小五郎(玉山鉄二)に接触し、吉之助との会談を設定した。

 だが、ちょうど同じ頃、京都にいる大久保一蔵(瑛太)から、「急いで上洛してほしい」との手紙が届く。幕府による長州征伐が決定しないように力を貸してほしいというのだ。吉之助はやむを得ず、海江田武次(高橋光臣)を自分の名代として桂が待つ下関に遣わすこととし、京都に旅立つ。だが海江田は下関に向かわず、すっぽかされた桂は激怒。当然、薩長同盟が成立することもなく、間を取り持った龍馬も「お前は信用も義理も人情も失った」と吉之助を責め立てた――という展開だった。

 龍馬が薩摩に滞在したことや、西郷が桂との会談をすっぽかしたことなどは史実とされており、第31回はおおむねそれをなぞったストーリーとなっていた。ただ、妙に違和感が残った。なぜなら、この流れにおいて、吉之助にはほとんど落ち度がないからだ。それなのに龍馬は話も聞かずに吉之助をののしり、吉之助も「おいはないをしちょっとじゃ(自分はなんてことをしてしまったのか)」と落ち込む。これはおかしい。

 吉之助が京に向かったのは、長州征伐という名の戦を始めさせないためであって、言うなれば長州を救おうとしたことにほかならない。そんな事情を知らない桂が怒るのは仕方ないにしても、後から吉之助が事情を説明すれば済む話だ。早とちりした龍馬に非難されても、「京で長州を救うための工作をしていた」と言えば良かったのだ。むしろ、言うべきだった。自分が悪くもないのにやたらと反省する吉之助はちょっと変だし、そもそも、史実であるとはいえ、この「すれ違いエピソード」に一話費やす必要があったのか、はなはだ疑問だ。八月十八日の政変や、和宮の将軍家輿入れに代表される公武合体運動、海軍操練所の設立と廃止など、描いておけば歴史の流れがさらにわかりやすくなったであろう出来事はこれまでにも数多くあったが、本ドラマはそのほとんどを台詞でさらりと説明しただけで片付けてきた。

 もちろん、薩長同盟は吉之助が当事者として関与した出来事であり、じっくり描く必要があるのはわかる。だが、ドラマの中で大事なのは、あくまでも「薩長同盟の成立」であり、その前に西郷と桂の間でトラブルが起きた、などというストーリーは枝葉にすぎない。大きな歴史の流れをたびたび省略しておきながら、さほど重要でないエピソードに尺を割くとは、随分とアンバランスな脚本だ。

 とはいえ、第32回でいよいよ薩長同盟が成立することになる。商売にしか興味がなく、「日本を一度せんたくいたし申候」などとは絶対に言わなそうな人物として描かれている龍馬が、薩長同盟成立においてどの程度の役割を果たすのか、非常に興味深い。さらに、ここから先は、戊辰戦争、明治政府への参加と下野、西南戦争など、西郷の生涯における大きな出来事がめじろ押しだ。まずは薩長同盟成立をどのくらいのクオリティーで描けるかが、このまま視聴率2桁台にとどまれるか、屈辱の1桁台に転落するかの分かれ道になりそうだ。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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