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堀田秀吾「ストレス社会を科学的に元気に生き抜く方法」

暗記直後の飲酒、記憶力上昇との研究結果…発想力を要する仕事、飲酒しながらで成果向上

文=堀田秀吾/明治大学法学部教授
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 ビーマンらの実験により、ユーレカモーメントが発生する5秒前には、α波が大量に出ているということがわかりました。α波の放出量を増やすには、人間がリラックスしていることが必要です。アルコールを摂取すると発想力が豊かになるのは、おそらくお酒によってリラックスし、α波の放出量が増加したことによって生じた効果のようです。これは、ちょうど散歩中やシャワー中などに新しいアイデアを思いつくのと同じです。

 お酒で発想力が良くなる一方、脳の処理速度のほうはというと、ミズーリ大学のソールツらが行った実験では、21~30歳の36人ずつの男女、計72人を対象に、ウォッカを使ってアルコールを摂取したグループと、アルコールを摂らないグループ、プラセボのグループに分けて、視覚的な刺激として「色」の配列を見せ、聴覚的な刺激として「音」を聞かせて、それらの刺激の記憶を調べました。

 結果、記憶力に大きな違いはないものの、課題をこなしているときの脳のワーキングメモリーの処理速度が少し遅くなることが観察されました。飲みながら記憶課題をやるのは少し効率が悪いということなのでしょう。

 先ほどのジャロスツらの実験結果とは真逆の結果となっていますが、それは、これらの2つの実験では異なる種類の作業をしたからだと思われます。少なくとも、これらの結果が意味するのは、発想を要する作業だと処理速度は早くなり、記憶に関する作業だと処理速度が遅くなるということでしょう。

飲む前に覚えると記憶力が高まる

 おもしろいことに、記憶力に関しては、お酒を飲む直前に暗記したほうが良いという実験もあります。エクセター大学のカーライルらの研究で、88人の被験者に単語を覚える課題をやってもらい、その後アルコールを摂取するグループと、まったく摂取しないグループに分けてそれぞれその日を過ごしてもらいました。翌日、同じ課題をやってもらったところ、アルコールを摂取していなかったグループはわずかに正答率が下がったのに対し、アルコールを摂取していたグループは約10%正答率が上がりました。 

 まとめると、発想力を要するような作業であれば、アルコールは有益に作用する一方、記憶などの作業の場合は、アルコールを飲みながらやるのはよくないということになるのでしょう。

 発想力が必要な作業があったとしても、まだまだ日本の文化では、さすがに職場あるいは就業時間中にアルコールを飲み始めるというのは勇気の要ることでしょう。ですから、まずはユーレカモーメントを引き出すために、お手軽にα波を増加させる方法として、職場で実践できる自分のリラックス方法を用意しておくことが重要そうですね。そして、何か暗記しなければいけないことがあるときは、勉強や仕事の終わる直前に暗記をやって、終わった後にパーっと飲みに行くというのが良さそうです。
(文=堀田秀吾/明治大学法学部教授)

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