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木村貴「経済で読み解く日本史」

地球、寒冷化の脅威…近づく氷期突入、人類にとって最大の災害

文=木村貴/経済ジャーナリスト

地球寒冷化

 以上見たように、豊かな縄文時代をもたらしたのは温暖化だった。もちろんそれが唯一の要因とはいえないが、暖かい自然環境がなければ、これほど大きな変化が起こらなかったのは確かだろう。

 現在、地球温暖化は自然環境や人間の暮らし、健康に重大な悪影響を及ぼすとして問題視されている。けれども縄文時代の例をみる限り、温暖化は人間社会に必ずしも悪影響を及ぼさない。長期の気候変動から考えれば、今後警戒が必要なのは温暖化ではなく、むしろその逆の寒冷化だろう。

 古気候学者の中川毅氏は著書『人類と気候の10万年史』(講談社ブルーバックス)で、人間の未来にとって最も恐ろしいのは、現代の「安定で暖かい時代」がいつかは終わるというシナリオではないか、と指摘する。

 氷期が終わり縄文時代が始まったときから数えれば、今まですでに約1万3000年もの年月が流れている。古気候学の知見によれば、過去3回の温暖な時代はいずれも、長くても数千年しか持続せずに終わりを迎えた。つまり今の温暖期は、すでに例外的に長く続いている。その意味では、いつ次の氷期が訪れてもおかしくない。

 前回の氷期が終わった時点で世界人口はおよそ50万~100万人だったと推定されている。一方、現在の世界人口はすでに70億人を超え、国連の予測によれば今世紀中頃には100億人を突破する。再び氷期に突入し、温暖な気候を前提とした農業や漁業ができなくなれば、多数の人口を支えるのは難しい。「人類が遭遇する可能性のある災害としては、間違いなく最大級のものに違いない」と中川氏は警鐘を鳴らす。

 地球温暖化は悪と信じる「政治的に正しい」言論人や進歩派メディアは、温暖化を防ぐためと称して政府に経済活動を規制させようとする。しかしそれは本当に正しいのか。温暖化の贈り物である縄文の豊かさと美が関心を集める今こそ、頭を冷やして考え直したい。
(文=木村貴/経済ジャーナリスト)

<参考文献>
展覧会図録『特別展 縄文――1万年の美の鼓動』NHK・NHKプロモーション・朝日新聞社
岡村道雄『縄文の生活誌』(日本の歴史 01)講談社学術文庫
木下正史『倭国のなりたち』(日本古代の歴史 1)吉川弘文館
今村啓爾『縄文の豊かさと限界』(日本史リブレット 2)山川出版社
中川毅『人類と気候の10万年史』(講談社ブルーバックス)

木村 貴/経済ジャーナリスト

木村 貴/経済ジャーナリスト

経済ジャーナリスト。1964年熊本生まれ、一橋大学法学部卒業。大手新聞社で証券・金融・国際経済の記者として活躍。欧州で支局長を経験。勤務のかたわら、欧米の自由主義的な経済学を学ぶ。現在は記者職を離れ、経済を中心テーマに個人で著作活動を行う。

Twitter:@libertypressjp

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