NEW
山崎将志「AIとノー残業時代の働き方」

日本の「おもてなし」は押し付けがましい? 欧米で普通になされる本当のホスピタリティ

文=山崎将志/ビジネスコンサルタント

相手の好みを尊重するのがホスピタリティ、がんばる自分を見てもらうのがおもてなし

 日本旅館なども同じです。食事を部屋で食べさせてくれるのはオツでよいのですが、食事のメニューを選べるところは多くありません。宿が一生懸命考えた「力作」がこれでもかというボリュームで出てきます。事前に言えば考慮に入れてもらえるのでしょうが、予約時や配膳前に食事の好みを旅館側から積極的に聞かれた記憶がありません。ビールはすべて「ビール」としか注文できません。ときどきメーカー名を聞かれることがありますが、それはたとえばキリンビールの関係者に対してアサヒビールを出すのはマズい、という一般客にはどうでもよい政治的な配慮です。

 また、食事の時間も決められていて、しかも午後6時から8時など、かなり短い時間の幅の中でしか選べません。そうなると必ずその時間までに宿に到着しなければなりません。食事が終わったら風呂だというのも暗黙の了解で、風呂から戻ると部屋に布団が敷いてあります。私も温泉旅館は好きですが、この「縛られ感」が正直苦手です。食事は午後9時過ぎにしてほしいとか、部屋に匂いがつくからその場で焼く料理は別のものに変えてくれ、腰が悪いから椅子に座ってテーブルで食べたい、などのリクエストは、私も日本人なのでちょっと言いづらいのです。それでも、なんでそんな決めごとが多いのかと感じています。

 このあたりに、日本人のホスピタリティの弱さがあると思います。「おすすめはこれ!」というのがあることはよいことですし、その品質も素晴らしいのですが、他人の好みにカスタマイズを受け付けない点があります。日本人が考えるホスピタリティは、提供者がこれでもかとがんばって、技術を磨いて、いろいろなものを忙しいくらいにサービスするものがよしとされているように思います。ちょうど役者が演じる筋書きの決まったショーのようなものです。

 ですから、客が「放っておいてほしい」と言うと、ショーに来たのに見てくれない客とみなされます。言葉では「わかりました」と言いますが、内心はがっかりするというのが日本人のメンタリティです。世界中でサービス産業化が進んでいますが、残念ながらグローバルに受け入れられている日本発のサービス産業はほとんどありません。受け入れられているのは工業製品やコンテンツなどの「モノ」ばかりです。

 辞書で「ホスピタリティ」を調べると「おもてなし」と出てきます。しかしこの2つの言葉の立脚点は同じではありません。相手の好みを尊重するのがホスピタリティ、がんばる姿を見せるのがおもてなし、と私は解釈しています。

 日本人が考える日本一のサービス業というのは、日本人にとっては最高なのですが、普遍的に受け入れられるものではありません。外国人は押し付けがましいとか、too muchだと感じているかもしれないのです。

 それでも、少なくとも欧米人は相手の好みを尊重しますから、おもてなしにがんばる日本人のやり方を結局のところは受け入れ、異文化体験として楽しんでくれることでしょうが。
(文=山崎将志/ビジネスコンサルタント)

●山崎将志
ビジネスコンサルタント。1971年愛知県生まれ。1994年東京大学経済学部経営学科卒業。同年アクセンチュア入社。2003年独立。コンサルティング事業と並行して、数社のベンチャー事業開発・運営に携わる。主な著書に『残念な人の思考法』『残念な人の仕事の習慣』『社長のテスト』などがあり、累計発行部数は100万部を超える。
2016年よりNHKラジオ第2『ラジオ仕事学のすすめ』講師を務める。最新刊は『「儲かる仕組み」の思考法』(日本実業出版社)。

関連記事

プレスリリース入稿はこちら サイゾーパブリシティ