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オリンパス、不祥事続出で米司法省が警告…同社製内視鏡で死亡事故、中国マフィアと契約

文=山口義正/ジャーナリスト
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 過去には損失隠し事件に加えてブラジルでの過剰接待問題を引き起こし、さらには贈賄疑惑と並行するかたちで、2012年に欧米で生じた超耐性菌の大量感染問題も抱えている。オリンパス製の十二指腸内視鏡がもとで抗生物質が効かない超耐性菌に感染した患者が大量発生し、特に米国では死者も出たことから集団訴訟が起きた問題である。これへの対応が拙劣だったために、米司法省(DOJ)や米食品医薬品局(FDA)の不興を買っているのだ。

 この問題をめぐって2017年6月には、吉益健執行役員が米司法省で開かれた会議に出席。その詳細な模様をメールに書き、笹宏行社長と竹内康雄副社長、平田喜一常務らに送っている。そのメールによると司法省の監督官は、物わかりの悪い不良少年を諭したり叱りつけたりするような調子で、企業文化を変える必要性を諄々と指摘したようだ。執行役員からのメールには監督官の様子について「こちらからのプレゼンの最中も不満の表情が私には見て取れました」と記されている。執行役員は会議の間、針のむしろに座らされていたような気分だったのだろう。報告はさらに続く。

「法令順守のために社員がどう行動し、そのためには何を変えていくか。社員が問題に気づいたら、上司を恐れずに報告する文化が必要であり、今のままでは2年後に同じような問題を起こすのではないか」

 司法省の監督官はオリンパス側にこう指摘した。司法省は大量感染の根本に横たわっているのは、単なる品質の問題ではなく、企業文化であると考えていることがわかる。監督官からこう指摘されたオリンパス側の出席者は「一同どのように返答すべきか苦慮し、重苦しい空気になった」という。

問題を指摘した社員を左遷

 繰り返しになるが、この会議が開かれたのは2017年6月である。深センで「現地のコンサルタントと取り交わした契約は法律に違反する恐れがある」と指摘した幹部社員が新設部署に左遷され、自己研鑽の独習を命じられたのは、それからわずか半年後。結果から見れば、司法省が求めた企業文化の変革など「馬の耳に念仏」だったのだ。

 とはいえ、前述したように、監督官の指摘に返す言葉が見つからず、黙り込んでしまうほどだから、この執行役員も企業文化や社風を変えなければならないことくらいはわかっているはずだ。そして深セン問題がどう展開してきたのかをみれば、問題点を上司に報告する社員は確実に存在する。ただ、報告を握りつぶしてしまう役員や、それを支えてしまう社員が多く残っているのが問題なのだ。

 企業文化や社風を改めるのはそれほど難しく、深セン問題は不正を認めるには、巨額の罰金支払いや役員の退陣などといった影響が大き過ぎるのだろう。
(文=山口義正/ジャーナリスト)

●山口義正
ジャーナリスト。日本公社債研究所(現格付投資情報センター)アナリスト、日本経済新聞記者などを経てフリージャーナリスト。オリンパスの損失隠しをスクープし、12年に雑誌ジャーナリズム大賞受賞。著書に『サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件』(講談社)

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