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女性医師の生涯未婚率35.9%、休職の主要因は自分の病気…女性医師を破壊する医療現場の闇

取材・文=小野貴史/経済ジャーナリスト
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――厚生労働省の資料を見て驚いたことがあります。女性医師が離職もしくは休職する理由の1番目が出産、2番目は子育てで、3番目の理由が自分の病気療養です。勤務医の仕事が過酷なことは知られていますが、そこまで過酷なのですか。

細井 度重なる当直や、当直明けの連続勤務などは健康を害する要因には十分なり得るでしょう。概日リズムも大きく崩れますし、特に女性にとっては、ホルモンバランスの面でも不調をきたす原因になると思います。「自分たちはブルーワーカー」と口にする医師は多く、確かに体力と精神力を削りながら、働いているのです。こうした現状を踏まえると、あえて女性医師が、夜間診療の多い科を避けてしまうのは至極当然ともいえるでしょう。

 一方、アメリカでは、ハードで専門性の高い科ほど年収が高い傾向にあり、心臓外科などは年収5000万円くらいです。これだけの金額なら納得できる医師も増えるかもしれません。

――日本では診療科によって給与水準に差がないのでしょうか。

細井 常勤の給与は科に関係なく、学年やポストで決まり、差はほぼないと思います。時間外勤務をしたり、当直をたくさんこなしたり、休日にアルバイトに行くことで収入をアップさせるというのが、医者の稼ぎ方なのです。

なぜ医師の労働環境は改善されないのか

――医師の長時間労働を是正する手段に医療のIT化が挙げられていますが、日本の医療現場では、まだIT化が遅れているのですか。

細井 IT環境はまだ改善の余地はあると思います。カルテを国内でテンプレートを統一し、各病院で共通のデータベースで患者情報を管理することで紹介状作成の手間を省いたり、AIによる診断を導入することで時間削減を図ったり、さまざまなIT技術で医者の業務を減らすことはできると思います。

 しかし実際、さまざまなイノベーションが起きていても、それをすんなり取り入れにくいのが、先ほども言った通り日本の性質ですよね。確かにカルテシステムなんかは大病院で入れ替えるとなると、数千万円のお金がかかりますから、病院単位で先進的にそういった試みは足取りが重いことも考えられます。そういった部分には国立病院が主導となってリードしていく必要があるとは思います。

 休日の指示等に関しても、自分のスマートフォンからオーダーや指示を管理できるようになればどれだけ可処分時間が増えるでしょうか。働きやすい環境をつくることで医師がストレスなく長く先進医療に従事し、結果的には医療資源の増大をもたらすのです。

――日本でIT産業を管轄するのは経済産業省です。ところが、厚生労働省にはIT化に限らず経産省が進める医療関連プロジェクトに対して、「医療の産業化によって、医療に市場原理を持ち込むことは好ましくない」というような拒絶反応があるようにもみえます。

細井 そうですね。ITの推進などイノベーティブなテーマを推進するのは経産省ですが、それを厚労省がのまない限り、医療現場に普及しません。医療機器は製品化されてから保険適用されるまで5~10年かかります。保険適用されないと、一般の患者さんは利用できません。さまざまなベンチャー企業が多様なアイデアを持っていますが、それを保険適用にするかどうかは、厚労省の医系技官や役人が承認してくれなければなりません。医療費増大がささやかれるなか、なかなか承認が下りにくいのは仕方のないことだとは思いますが、20~30年後の医療を鑑みた長期的な展望は必要だと思います。

――政策を検討する専門家たちの年齢も気になります。厚労省の医療分野の審議会や検討会の委員は、主に大学教授や医療関連団体の代表者などが就任していて、多くの方が60歳以上です。

細井 彼らは医療界の具現の士であることは間違いないと思いますが、今後20~30年の医療を自分の問題としてとらえてもらえるでしょうか。実際に20年後の医療を背負っていく世代の起用を進め、ベテランとイノベーターがシナジーを起こしていくことが求められていくと思います。
(取材・文=小野貴史/経済ジャーナリスト)

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