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篠崎靖男「世界を渡り歩いた指揮者の目」

クラシック音楽演奏者のオーケストラ就職が「あり得ないほど困難」な特殊事情

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国際化が進む音楽市場

 日本の音楽市場では、指揮者やソリストの国際化はもっと進んでいます。音楽監督や常任指揮者のようなオーケストラの顔ともいえるポジションの3人に1人は外国人ですし、ゲストの立場の客演指揮者や、ピアニストやヴァイオリニストなどのソリストは、かなり外国人の比率が多くなっています。

 実は、今現在の世界の音楽市場は、アジアに強い視線を向けていることも強く関係しているのです。これは、2008年のリーマンショックで音楽市場もがらりと変わったことが大きな一因です。リーマンショックは、欧米では国を揺るがすくらいの深刻な事態でした。当時、僕は英国に住んでいたのですが、リーマンショックの影響が比較的少なかった日本の円が買われ、一時、「1英ポンド=260円」くらいだった為替レートが、あっという間に半分になってしまったほどです。そして、この金融危機から国や企業は、なんとか乗り越えるために緊縮予算を余儀なくされたことはご存じの通りです。

 基本的に、ヨーロッパの文化予算は国や市に依存しています。財政が厳しくなっても、教育や医療、社会保障に切り込むことはそれほどできません。そうなると、まずは文化予算が削られてしまいます。アメリカのように、企業の寄付にほぼ依存しているオーケストラになるともっと深刻で、実際に次々と経営危機になりましたし、倒産した有名なオーケストラもあったくらいです。

 つまり、音楽会の数が激減し、欧米では指揮者やソリストを含む音楽家たちの仕事にあぶれるという状況になったところで、ロンドンやニューヨークの音楽事務所が目を付けたのがアジアの音楽市場です。欧米の為替レートも低水準なので、結果、アジアのオーケストラも欧米の演奏家を呼びやすくなりましたし、一回でも多くの演奏機会を求めて、日本のオーケストラはもちろん、韓国、香港、シンガポール、マレーシアのオーケストラに、指揮者やソリストがドンドン来るようになりました。有力音楽事務所ともなると、アジアに支店を置いているくらいです。

 さて、最初の話題でもある、全就業者数に占める外国人の割合の話題に戻ります。これは、「外国人依存度」という言葉で表現されることが多いようです。しかし、「依存」という言葉の意味は、「他のものにたよって成立・存在すること」(「大辞林」より)です。なんだかネガティブな印象を受けます。現在の国際化した世界社会の一員としての日本。これからは、外国人と「共存」していかなくてはならないのではないかと僕は思います。

 音楽大学を出ても、オーケストラに就職できるのは一握り。そんなすごい才能の集まりがオーケストラなのです。
(文=篠崎靖男/指揮者)

●篠﨑靖男
 桐朋学園大学卒業。1993年アントニオ・ペドロッティ国際指揮者コンクールで最高位を受賞。その後ウィーン国立音楽大学で研鑽を積み、2000年シベリウス国際指揮者コンクール第2位受賞。
 2001年より2004年までロサンゼルス・フィルの副指揮者を務めた後、英ロンドンに本拠を移してヨーロッパを中心に活躍。ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、BBCフィルハーモニック、ボーンマス交響楽団、フランクフルト放送交響楽団、フィンランド放送交響楽団、スウェーデン放送交響楽団など、各国の主要オーケストラを指揮。
 2007年にフィンランド・キュミ・シンフォニエッタの芸術監督・首席指揮者に就任。7年半にわたり意欲的な活動でオーケストラの目覚ましい発展に尽力し、2014年7月に勇退。
 国内でも主要なオーケストラに登場。なかでも2014年9月よりミュージック・アドバイザー、2015年9月から常任指揮者を務めた静岡交響楽団では、2018年3月に退任するまで正統的なスタイルとダイナミックな指揮で観客を魅了、「新しい静響」の発展に大きな足跡を残した。
 現在は、日本はもちろん、世界中で活躍している。ジャパン・アーツ所属
オフィシャル・ホームページ http://www.yasuoshinozaki.com/

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