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『チアダン』ファンを裏切る最低回…「性格改変」&いい加減な脚本は同ドラマへの侮辱だ

文=吉川織部/ドラマウォッチャー
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 土屋太鳳主演の連続テレビドラマ『チアダン』(TBS系)の第9話が、7日に放送される。広瀬すずが主演を務めた同名映画で描かれたチアダンス部「JETS」の打倒を目指す、福井西高校のチアダンス部「ROCKETS」を中心とする青春ドラマだ。土屋やE-girlsの石井杏奈らによる吹き替えなしのダンスシーンが見どころのひとつとなっている。8月31日に放送された第8話は、平均視聴率が前回より0.5ポイント下がって6.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だった。第9話の放送を前に、簡単に振り返っておきたい。

 ROCKETSの設立メンバーである3年生は、具体的に進路を決める時期を迎えていた。一方、桐生汐里(石井杏奈)は東京にいる父に呼び出され、アメリカへの転勤が決まったので一緒に来ないかと誘われていた。汐里は昔から「アメリカでチアダンスを学びたい」と公言していたのだ。だが、両親の離婚後、ずっと母と暮らしていた汐里は「急に父親面されても困る」と、それを跳ねつけた。

 その帰り道、汐里はかつて通っていた高校の後輩をチンピラから助ける。だが、その時に軽く負傷したチンピラは汐里を逆恨みし、彼女を中傷する情報をインターネットに流す。さらに汐里には、損害賠償を請求するとの電話が弁護士からかかってきた。ROCKETSに迷惑がかかることを恐れた汐里は、「チアダンス部を辞めてアメリカに行く」と突然宣言し、メンバーを困惑させる――という展開だった。

 結論を先にいっておくと、第8話は内容のダメさ加減において同ドラマの最低を更新した回であり、第9話での挽回を期待したい。

 広いジャンルとしてはスポ根モノに分類されるドラマであるため、毎回なんらかのトラブルなり困難なりがやって来るのは当然だ。だが、「部員の誰かが責任を感じて辞める」というパターンは、この前の週の第7話でやったばかりである。これでは「ネタ切れ」と言われても仕方がない。

 ちなみに、第7話で「大会に出ない」と言い出したのは、もともとダンスに自信がない榎木妙子(大友花恋)だった。これはわかる。だが、汐里は当初からずっとイケイケキャラで、誰に対してもはっきり物を言い、納得できなければすぐに食ってかかる気性の激しい生徒として描かれていた。それなのに、第8話では急にうじうじキャラに豹変。これまでの汐里なら中傷の書き込みに激ギレし、「あたしはなんにもやってない」と無実を晴らそうとするはず。話のパターンも少ないし、その少ないパターンに当てはめるために主要キャラの性格まで変えてしまったとあっては、「ダメ脚本だった」と言わざるを得ない。

 面識もないのにチンピラたちに汐里の個人情報がほとんどバレていたり、弁護士が汐里の携帯番号を知っていて直接掛けてきたりと、設定があまりにもいい加減なところも目に付いた。警察まで出てくる大ごとになっているのに汐里の母が一切この件にかかわらず、チアダンス部の顧問代理を務める教頭(木下ほうか)が解決に奔走したという結末も、違和感満載だった。

 交通事故の治療で入院しているはずの漆戸太郎(オダギリジョー)が一度も登場しなかったのも腑に落ちない。チアダンス部の設立に深く関わり、入院してからも彼女たちを温かく見守り続けたメインキャラなのに、台詞の中に太郎の名前が出てくることすら一度もなかった。今まで何かと「太郎先生、太郎先生」と慕い、何かあればすぐに相談していたわかばでさえも、第8話では太郎を一度も思い出さないという徹底ぶりだった。

 このように、第8話はご都合主義満載の展開や汐里の性格改変、太郎の存在を消し去ったことなど、過去の回に比べて脚本の質がガクンと落ちた。これは、このドラマの脚本家が回によって異なることの弊害ではないだろうか。連続ドラマの脚本を複数の脚本家が書くこと自体は珍しくないが、1人で書くのに比べ、全体の構成組み立てや、伏線張り・回収などが難しいのは容易に想像がつく。自分で書かなかった回との整合性を保つのも面倒だと思う。ちなみに、第8話を担当した徳尾浩司は本作で3~5話を担当しており、それ以外の4回は3人の脚本家がそれぞれ1~2話ずつを書いている。

 第9話の脚本家が誰になるかはわからないが、おそらく最終回前の大詰めになるはず。予告によれば、わかばが本番1カ月前に足をケガしてしまい、汐里が「もう来なくていい」と怒りをあらわにする展開になるようだ。3週続けて部員の誰かが辞める辞めないの話かよ、という気もするが、女優たちはがんばっているのだから、脚本と演出さえ良ければ素直に感動できる青春ドラマになるはずだ。この期待が裏切られないことを願っている。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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