地方経済の疲弊、国際競争力の低下など、課題が山積みの日本経済。中でも喫緊に解決しなければならないのが中小企業の後継者問題です。
実は2025年までに、約127万の中小企業が後継者不足によって廃業する可能性があるといわれています。そして、中小企業庁の発表によれば、このまま問題を放置した場合、2025年頃までの10年間で累計約650万人の雇用と約22兆円の国内総生産(GDP)を失う可能性があるというのです。
■倒産する中小企業の約半分が黒字
これは、決して大げさな話ではありません。
中小企業の経営者が引退する平均年齢は70歳前後と言われており、中小企業庁の推定では、2025年時点で経営者の引退の平均年齢である70歳に達する中小企業経営者が、約245万人。中小企業の経営者全体のなんと6割以上になります。
しかも、現時点でその約半数にあたる127万人が後継者未定。このままいくと、後継者がいないために廃業になる可能性が高くなります。さらに廃業・休業する企業の約半数が黒字と言われていますので、約60万社の黒字の優良な企業が後継者不足によって廃業してしまいます。ですから、日本経済的にも大きな損失になることは自明でしょう。
国も今すぐ解決すべき課題として、平成30年4月から10年間、事業を引き継ぐ(事業承継をする)企業に関して、事業承継をする際の税制の優遇を決めています。
■事業承継で失敗しない会社とは
事業承継は今すぐにでも考えなければならない問題です。しかし現実には、
(1)後継者がなかなか見つからない
(2)後継者がいるにも関わらず事業承継に失敗する
という2重の問題が待ち構えています。(1)はもちろんですが、(2)も非常に厄介な問題。古参の社員と新社長との意見が合わず、優秀な部下が大量に辞めてしまった、反発にあったという話は珍しくありません。
この2つの問題を一挙に解決する対策を提示するのが、『会社を後継者にうまく引き継ぐたった一つの方法』(アスコム刊)の著者である髙橋恭介氏です。
髙橋氏によると、(1)と(2)をともに解決するために大事なのは「ヒト」、つまり社員やスタッフです。彼らを大事にすることが最も重要で、そのために必要なのが、社員一人ひとりを正しく評価する人事評価制度です。
正当な評価をすることで、社員のやる気が高まり、能力開発へと発展させていくことが可能です。それは、後継者育成にもつながります。また、会社へのエンゲージメント(会社への愛着信、忠誠心)が高まり、次世代に承継後に、社員が反旗をひるがえすこともなくなるのです。
社員を正当に評価することが、会社を自分の代で閉じることなく、将来にわったって維持発展を続けていく「100年企業」への道が見えてくる。それが日本経済の発展につながると髙橋氏は語ります。
日本経済のこれからを大きく左右する「事業承継」問題。高橋氏の著書『会社を後継者にうまく引き継ぐたった一つの方法』は、その現状から解決策まで分かりやすくまとめています。良い経営とは何か、そして事業承継について学んでみるのもいいかもしれませんね。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。