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「加谷珪一の知っとくエコノミー論」

東京の過剰なビル建設、ツケを払うのは私たち一般労働者だ…大手不動産会社も銀行も無傷

文=加谷珪一/経済評論家
東京の過剰なビル建設、ツケを払うのは私たち一般労働者だ…大手不動産会社も銀行も無傷の画像1「Gettyimages」より

 東京都心ではここ数年、かつてない建設ラッシュが続いている。東京オリンピック特需ともいわれているが、必ずしもそうではない。ホテル建設は明らかにインバウンド需要を意識したものだが、それ以上に一般的なオフィスビルが次々と建て替えられている。ビルの建設は好景気の象徴といわれるが、大量供給に死角はないのだろうか。

オフィスビル建設とオリンピック特需は関係ない

 
 今年3月、三井不動産が1300億円を超える資金を投じて開発した東京ミッドタウン日比谷が開業した。かつてこの場所には複数のオフィスビルが建っており、これらを統合するかたちで巨大複合施設が出来上がった。

 ミッドタウン日比谷は、一連の再開発のなかでも規模の大きい部類に入るが、似たような開発案件が都心のあちこちで進められている。2018年には20を超える大型ビルが開業、もしくは開業を予定しており、2019年もほぼ同数のビルが竣工予定となっている。

 一連の大型開発はオリンピック特需といわれているが、必ずしもそうとはいえない。オフィスビルと同様、数多くの商業施設やホテルが建設されているが、これらは基本的に外国人観光客を目当てにしたものなので、オリンピック特需のひとつといってよいだろう。

 だが、次々と建設される大型のオフィスビルはオリンピック特需とは直接関係しない。当たり前のことだが、オリンピックが開催されたり、インバウンドの需要が増えたからといって、急にオフィスビルが不足するわけではないからだ。

 では、なぜ最近になって大型オフィスビルが続々と建設されているのだろうか。メディアでよくいわれているのが景気回復である。確かにここ1~2年は、好調な米国経済を背景に輸出が伸びており、製造業を中心に業績を拡大する企業が増えている。

 2017年の実質GDP(国内総生産)成長率はプラス1.6%とまずまずの結果だったが、過去5年の平均成長率はプラス1.2%にとどまっている。マイナス成長だった年もあることを考えると、好景気とはいえない。日本経済は輸出主導型から内需主導型にシフトしているはずだが、肝心の個人消費は低迷が続いている。次々とオフィスビルを建設しなければならない状況ではないことは明らかだ。

銀行にとって唯一、安心して融資できる案件

 
 それにもかかわらず、これだけの建設ラッシュが発生する要因のひとつとなっているのが量的緩和策である。日銀は2013年4月の金融政策決定会合において、国債購入を通じて市場に大量のマネーを供給する量的緩和策の実施を決定。年間80兆円ものペースで市場から国債を買い続けた。

 当初は為替が円安に進み、消費者物価指数も上昇したが、その後、物価の上昇ペースは鈍化。最近では量的緩和策の効果について疑問視する声も出てきている。この政策が効果を発揮したのかという議論はさておき、5年にわたる資金供給の結果、金融機関には400兆円もの資金が流入した。

 だが、国内の消費や設備投資は伸びておらず、銀行は新しい融資先の開拓に苦慮している。融資の原資は顧客の預金なので銀行は過度なリスクを取ることができない。現時点で多額の資金を必要としている企業は経営状態が悪いところがほとんどなので、銀行は貸したくても貸せないというのがホンネだろう。

加谷珪一/経済評論家

加谷珪一/経済評論家

1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『教養として身につけたい戦争と経済の本質』(総合法令出版)、『中国経済の属国ニッポン、マスコミが言わない隣国の支配戦略』(幻冬舎新書)などがある。
加谷珪一公式サイト

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