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航空経営研究所「航空業界の“眺め”」

中国勢が世界の航空機市場を席捲する日

文=稲垣秀夫/航空経営研究所主席研究員
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中国勢が世界の航空機市場を席捲する日の画像1COMACのC919(「Wikipedia」より/Mdann52)

完成に立ちはだかる壁

 航空機製造業界においては、なぜ中国メーカーやロシアメーカーの民間機開発は時間を要し、いまだ完成に届いていないのか。それは空を飛ぶ機械だから設計が難しいという理由では決してない。

 その理由のひとつは、数百万点の部品を組み上げる近代航空機という複雑な機械を設計し、サプライチェーンを構成する数多くのベンダー(供給会社)をつないで全体の製造工程を動かす必要があるからだ。多岐にわたり連鎖していく設計の手直しが開発過程で発生することは、あらゆる製品の開発で避けられないことだが、これを複雑化することなくひとつずつ整然と解決し、同時に関係するベンダーも刻々と変化する設計をタイムリーに間違いなく生産工程に反映する必要がある。

 さらに、細部のデザインは1種類ではなく、オプションと呼ばれる顧客の選択による複数の仕様を持つことも多い。こうした細部での設計の多様化にも対応する必要がある。ひとつ間違うと糸が絡まるように開発プロジェクトが混乱してしまうだろう。この複雑さをうまく管理する必要があるが、経験の乏しい後発各社はスマートに対処するノウハウを持ち得るのか。

 先進2社でもコンピューター利用が大きく進んだ2000年代に、エアバスはA380、ボーイングは787で開発の大幅遅延や初期の生産規模のペースダウンを引き起こした。さまざまな原因分析が行われたが、詰まるところコンピューターが可能にした航空機の複雑かつ緻密な設計、その管理手法がいまだ発展段階にあったためではないか。

 航空機の歴史が100年を超えるに至った今、航空機メーカーにとっての最大のノウハウは、飛行機をデザインする難しさよりも、むしろ設計と生産全体のマネジメントにあるようだ。この課題は他社に頼るのではなく、自ら習得するしかない。ブレークスルーするには、ある程度の時間が必要であろう。

型式証明は国際ルールで

 次に型式証明の取得に時間を要していることが考えられる。開発遅延といえば、どうしてもメーカーに目が向きがちになるが、型式証明の基準を整備し、それに基づく審査を行い、審査結果に基づき証明を発行するのは政府の仕事である。これは意外な盲点である。

 型式証明は航空機のハードウエアの安全管理であり、その管理責任は製造国の政府にあるのだ。検査要領に必要なものは法律文書ではなく、細かく具体的に記述された技術文書である。国の検査をクリアできず開発が遅れるのであればメーカーの責任だが、検査の準備に手間取り開発が進まないのであれば国の責任となる。

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