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航空経営研究所「航空業界の“眺め”」

中国勢が世界の航空機市場を席捲する日

文=稲垣秀夫/航空経営研究所主席研究員
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 ただし、技術的な内容であるとはいっても、型式証明に関する情報は開発企業のノウハウではないし、機密でもない。開発された航空機は国境を越えて使用されるものであるから、型式証明の認可基準は民間航空条約に沿った欧米と同一である必要がある。したがって理屈の上では、条約を批准している国であれば、必要な情報は他国に要求して入手することができる。したがって型式証明の検査経験がない中国は、米国や欧州の航空当局からいかにサポートを受けるかということが課題である。

 2017年に中国の李克強首相がドイツのメルケル首相に、中国の航空機メーカーCOMACが開発中のC919の型式証明発行について協力を求めた。エアバスA320の生産拠点はドイツのハンブルグにあるため、狭胴機の技術管理業務はドイツ航空当局の得意とする分野だが、A320とC919はライバル機種である。これまで、エアバスは販売促進のために中国国内でA320の組み立てを進めてきたが、今回ドイツ政府がどんな対応をするか注目である。また、同社が開発中のリージョナルジェットARJ21についても、2017年のトランプ米大統領の訪中時に習近平国家主席が米国に協力を依頼している。

 国を問わず、公官庁ではコンプライアンスの観点から現行の業務プロセスを変えがたいだろうが、膨大な数に上る審査項目を適切に処理するためには、コンピューター時代に相応しい合理的な業務、承認プロセスが求められ、進めようとしているものと思われる。

中国機C919は早晩完成する

 交通の観点から見た場合、中国の特徴はシンプルに大陸国家で面積が広く、人口が多い。現在は鉄道網、バス網が発達し、新幹線も随所でサービスを始めているが、経済が発達して1人当たりの所得が増えると、国内交通網はよりスピードを求めて、短距離では自動車に、中長距離では航空に集中する。いわば米国型の交通網に発展する傾向がある。

 多くのレポートが、将来は中国が米国を凌ぎ世界最大の航空輸送量を誇る国になると予測しており、ボーイングやエアバスが多少の技術流出を犠牲にしても、中国に合弁事業を展開し将来の顧客を確保しておきたいと努力している。間違いなく中国の最大の特徴は、潜在的に世界一の航空機マーケットを国内に持つという点である。

 今後COMACを中心とした中国の航空機製造がどんなスピードで進化するか予測することは難しいが、多少時間はかかろうとも同社が開発中のC919、ARJ21、CR929の開発は完了する。その時、中国、そしてロシアの民間航空機メーカーは、新興国を中心としたマーケットにおける主要供給元のひとつとして大きな役割を担うだろう。

 なお、このレポートでは三菱航空機のMRJについては触れていないが、上記の環境変化のなかでぜひとも生き残りを図り、世界市場で重要な役割を果たすことに期待したい。
(文=稲垣秀夫/航空経営研究所主席研究員)

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