ビジネスパーソン向け人気連載|ビジネスジャーナル/Business Journal

「あきらめるべきか、否か。それが問題だ!」
人生は選択の連続で、私たちは日常のあらゆる場面で選択を迫られています。
「せっかくここまでがんばったんだから、もう少しだけがんばろう!」
継続は力なりという、この気持ちはもちろんとても大切です。かの発明王、トーマス・エジソンも失敗しても失敗しても成功するまで続けたといいます。「めげない、くじけない、あきらめない」というのは、何かを成し遂げるための重要な要素です。
しかし、時には勇気ある撤退、つまり「あきらめが肝心」なこともあります。たとえば、パチンコなどのギャンブルを考えてください。ここまで時間とお金をつぎ込んだんだからそろそろ当たるはずと考えて、お金をつぎ込み続けてすっからかんになってしまったりします。いくらつぎ込んだからといっても、当たりやすくなるわけではないのにです。
経済学などでは、もうどうあがいても回収が不可能な時間や資本のことを「サンク・コスト(埋没費用)」と言いますが、これは私たちの判断を誤らせる要因のひとつとして知られています。人は、このサンク・コストに敏感で、たとえより良い選択肢が存在していても、サンク・コストを考慮に入れて判断しようとしてしまうのです。簡単にいうと、「これだけやったんだからもったいない。あと少しがんばればなんとかなるはずだ」と思って続けてしまうのです。
このように、それまでの金銭的、時間的、精神的な投資をもったいながって、損失が膨らむことが半ばわかっていながらも、やめられずにずるずると続けてしまうことを、超音速旅客機コンコルドが大きな金銭的・時間的な投資を続けたにもかかわらず、商業的に失敗してしまった例にたとえて、「コンコルド効果」などとも呼んだりもします。
サンク・コストは、これからの行動を考えるときに、無視すべき費用と考えるのがいいでしょう。そのほうが合理的な判断ができる場合が多々あります。
たとえば、さっきのギャンブルの例でいえば、ある程度お金をつぎ込んでしまった時点で、続ける判断をしてすっからかんになってしまう前に、続けた場合に費やすであろう時間とお金を労働につぎ込んだり、ステップアップのための勉強など、自身の向上のために使ったほうが最終的には得るものが大きかったりします。また、負けがかさんだときのストレスからも解放されます。
ほかの動物にもサンク・コスト?
面白いことに、このサンク・コストが判断に影響を与えるという事象は、人間の本能的な部分に関わっているということがわかってきています。サンク・コストの判断への影響は、人間だけでなく、ほかの動物でも観察されるためです。