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片田珠美「精神科女医のたわごと」

塚原千恵子氏、やましいところのある人ほど他人の悪を攻撃する自己欺瞞の典型例か

文=片田珠美/精神科医

 この常務が「パワハラの根絶」を強調するのは、パワハラ認定によって古参の管理職を排除すれば、その後釜に自分のお気に入りを据えられるという計算があるからだろう。

 今回の体操協会をめぐる騒動でも、以前からささやかれていた朝日生命体操クラブへの“引き抜き疑惑”が事実であり、宮川選手が告発した「私とコーチを引き離そうとした」という思惑が塚原夫妻にあったのなら、コーチを排除すれば有力選手を引き抜けるという計算が働いたのではないかと疑わざるを得ない。

 だが、それだけではない。他人の暴力やパワハラという“悪”を激しく非難することによって、そんな“悪”が自分にはないかのようにふるまえるメリットもある。つまり、自分自身の“悪”を否認するためにこそ、他人の“悪”を攻撃するわけで、やましいところのある人ほど、他人の“悪”をめざとく見つける。したがって、「もしわれわれにまったく欠点がなければ、他人のあらさがしをこれほど楽しむはずはあるまい」というラ・ロシュフコーの言葉は的を射ていると私は思う。

嘘や不倫という“悪”を激しく攻撃するのは後ろめたいから

 こうした傾向は、他の“悪”でも同様に認められる。たとえば、一般的に嘘つきほど他人の嘘に敏感で、「あの人は嘘をついている」と激しく攻撃する。もちろん、「自分は嘘をついていない」と自己正当化するためである。

 だから、宮川選手が会見した翌日、自宅前で報道陣に囲まれた光男氏が「(会見の内容は)全部嘘!」と言い放ったのも、千恵子氏が「宮川選手の発言には嘘が多い」と反論したのも、自己正当化のためなのではないかと勘ぐりたくなる。裏返せば、それだけ後ろめたいところがあるともいえる。

 これは、不倫でも同様である。他人の不倫を激しく非難する人ほど、実は自分も不倫三昧だったり、強い不倫願望を抱いていたりする。

 たとえば、某病院で、ある診療科の部長と看護師との不倫が発覚し、副院長が激怒して、その部長を平の医者に降格させた。そして、その後釜に自分が所属する大学医局の後輩を据えた。降格させられた元部長は退職し、田舎の病院に転職した。

 この降格によって自分が所属する大学医局の管理職ポストを増やせるという計算が、副院長にはあったはずだ。だが、それだけではない。古参の看護師の話では、部長の不倫を厳しく罰した副院長のほうこそ、不倫三昧だったらしい。医局秘書や看護師などと不倫を繰り返し、妻が病院に怒鳴り込んできたこともあれば、息子が副院長の外来診察日に外来診察室にやってきて「お父さんが家に帰らず、お金を入れてくれないので、なんとかしてほしい」と切々と訴えたこともあるそうだ。

 副院長は、自分は「不倫という“悪”とは無縁だ」、つまり「自分は白だ」と主張したいからこそ、部長の不倫に厳しく対処したのだろう。だが、事情を知っている人からすれば笑止千万な話で、年配の看護師は「副院長は後ろめたいからこそ、他人の不倫に厳しいのよ」と笑っていた。

 このように自分自身の“悪”を否認するために他人の“悪”に厳しく対処する自己欺瞞の塊はどこにでもいる。こういう人は、自分は欠点のない善人だと他人から思われたいとか、体面や世間体が傷つくのは嫌という気持ちが人一倍強い。

 しかも、どんな批判であれ、悪意ある攻撃と受け止めやすい。たとえ悪意のない適切な批判であっても、自分への攻撃と受け止めるので、少しでも批判されると腹を立てる。とくに千恵子氏は批判に過剰反応するように見えるので、今回の騒動は一体どういうかたちで収まるのだろうかと危惧せずにはいられない。
(文=片田珠美/精神科医)

片田珠美/精神科医

片田珠美/精神科医

広島県生まれ。精神科医。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。人間・環境学博士(京都大学)。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学ぶ。DEA(専門研究課程修了証書)取得。パリ第8大学博士課程中退。京都大学非常勤講師(2003年度~2016年度)。精神科医として臨床に携わり、臨床経験にもとづいて、犯罪心理や心の病の構造を分析。社会問題にも目を向け、社会の根底に潜む構造的な問題を精神分析学的視点から分析。

Twitter:@tamamineko

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