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順天堂医院・新生児取り違え、被害者に「愛人では?」「実の母親開示拒否」は仕方なしか

文=深笛義也/ライター
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 1973年の日本法医学会の学会誌には、1957年から1971年の間に32件の取り違えが起きていたという調査結果が報告されている。報告されていなかったり当人が気づいていないケースを考えると、500件ほどにはなるのではないかという記載もある。

「この時代の取り違えの多さは、ベビーブームの影響もあるでしょうね。子どもの生まれる数の多さに対して、人手が足りない状況というのは、ヒューマンエラーが起こりやすい。また、新生児の取り違えだけでなく、昔は医療過誤も多かった。手術で健全なほうの肺を取ってしまった、乳房を取ってしまったというようなことも話題になりました。今は病棟看護師、手術室看護師が、何度も手術部位を確認するプロトコールを通過した上で、手術執刀直前に、タイムアウトといって、1回、関わるスタッフが全員手を止めて、患者ご本人のお名前と画像と照らし合わせて、術式、腫瘍の左右、位置を画像も交えて確認します。手術に関わる全員が一度フラットな状態に立ち戻り情報共有することで、医療ミスを未然に防ぎます。昔のミスからの教訓が積み重ねられて、それが医療のスタンダードになっています」

個人情報保護の観点

 時間がたってから発覚するのが、新生児の取り違えの際だった悲劇だ。今年発表された順天堂のケースでは、本人が小学校入学の際の健康診断で、両親からは生まれない血液型だとわかったことが発端。取り違えを疑った母親に対して、順天堂は「あなたが浮気したんじゃないですか?」と問い返したという。

「血液型で親子関係が疑われる場合、その原因が浮気だというのは、実際にあることです。現代のシステム化された病院であれば、取り違えよりは、浮気であるほうが確率的には高いかもしれない。当時は順天堂大学病院も取り違えが起こるわけないと思い込んでいた部分はあるでしょう。実際に違うお父さんの子供だったという事例はあるわけですから。今回のように、浮気を疑ったという部分だけ雑に取り上げられると、あたかも患者に対して不躾な対応をしたかのように見えてしまいますけど、現病歴として婚外交渉があったのかどうかは確認する必要はあると思います」

 結局はDNA鑑定によって本人と母親に血のつながりがないことがわかり、順天堂は取り違えであることを認めた。本人は実の母を知りたいと求めたが、順天堂側はそれを拒否。順天堂によれば、50年以上が経過した後に知らせることによって、現在の母親の平穏な生活を乱し、取り返しのつかないことになるのではないかと考えたという。

「本当のお母さんを知りたいという本人の思いはわかりますが、医師の立場からすると、そのお母さん側からも「私も本当の息子を知りたい」という同意がない限り、守秘義務により、教えられないというのは、当然だと思います」-

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