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スルガ銀行、偽装第一主義の狂った経営様式…通常では考えられない組織、誕生の要因

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 しかし、スルガ銀行では通帳や収入証明など債務者関係の資料の偽装が常態化していた。同行は、金融機関として当たり前の取り組みを軽視していたのである。加えて、融資対象の物件資料などの偽装も行われていた。具体的には賃貸契約の内容や現状を一覧表にまとめた資料(レントロール)の偽装が行われた。その目的は、返済原資となる賃料収入を多く見せて融資額を大きくするためだ。

 なかには、「(最近うるさくなってきています)」(報告書P91より引用)と、行員が営業ノルマ達成への締め付けがきつくなっていることをほのめかし、不動産業者に高収益物件への偽装を求めたと解釈できる内容も記載されている。

 2017年6月の同行内の会議では、物件価格を過剰に引き上げる業者との取引が問題であるとの認識が示された。その後、今年1月には投資家に対して家賃保証を行ってきた不動産業者のスマートデイズ(すでに破綻)が保証していた家賃を支払えなくなった。その後も、行員は資料の偽装を続けていた。

 報告書を見る限り、営業部門の自助努力で不適切融資をなくそうとしてきた痕跡は読み取れない。行員へのアンケート内容を見ると、偽装への罪悪感はありつつも仕方なくやってしまったというのが多くの場合に共通する心理のようだ。スルガ銀行のコンプライアンス意識のなさはかなり深刻だ。

創業家による支配

 スルガ銀行では、個々の営業担当者に対して、なんらかのかなり強力なプレッシャーがあったと考えるのが妥当だろう。詳細はさらなる調査などを待たなければならないが、どこかのタイミングを境に同行内には不適切融資を容認せざるを得ない一種の呪縛のような行動様式が蔓延してきたと考えられる。

 その元凶の一つは、創業家によるスルガ銀行の支配だろう。スルガ銀行では、創業家出身の岡野光喜氏(9月7日付で辞任)が会長として経営にあたってきた。1980年代から同行は、岡野氏の指揮の下で法人向け融資に見切りをつけ、リスクが高いことを反映して利ざや(貸し出しの利回りから預金金利などの資金調達コストを控除した利回り)の厚い個人向け融資に注力してきた。第三者委員会は、そのなかで会長の実弟であった故岡野喜之助副社長が営業を極度に重視し、コンプライアンス意識の欠如した企業文化を形成した責任があると指摘している。

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