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米山秀隆「不動産の真実」

リバースモーゲージ型住宅ローンの利用者が急増している理由

文=米山秀隆/富士通総研経済研究所主席研究員

 本来のリバースモーゲージは、現に所有している住宅を担保にローンを借り入れるが、この商品では新たに取得する住宅を担保にできる点が特徴的で、その意味で住宅ローンの一種といえる。2017年度におけるこのローンの使途は、新築マンション購入が40%、新築戸建て建設が31%であった。一方、タイプ別では「ノンリコース型」の利用が61%であった。高齢者が購入する新築であれば、当然、売却時も築浅であり、金融機関は担保価値を高く設定できる。

 この仕組みを使えば、高齢者が新たに住宅を購入しようとしたり、住み替えをしたりしようとする場合に、高齢者の収入ではなく物件の担保価値によって融資を受けられることになる。高齢者が取得する築浅で担保価値が残りやすい物件という条件の下で成り立つ仕組みであるが、借主の収入ではなく、物件の担保価値に基づいて融資が行われる商品が出たという点で画期的である。

 この仕組みでは、自宅を担保に老後の生活資金が得られるというところまではいかないが、高齢者が新たな住まいに移る場合に、安心して融資を受けられる仕組みとして利用が広がりつつある。

今後普及していくための条件

 
 本来のリバースモーゲージは、担保価値の問題やリコース型であることなどが普及のネックとなっているが、近年はそれに類似した仕組みとして、リースバックやリバースモーゲージ型住宅ローンの仕組みなど特定の需要層狙いの仕組みが登場し、注目されている。住宅所有者が自宅に住んだままで、必要な資金を調達したいとの潜在的なニーズは大きいと考えられる。

 本来のリバースモーゲージについては、最近は先行して取り組んで一定のノウハウを蓄えた金融機関(例えば東京スター銀行、リバースモーゲージ「充実人生」の累計成約件数が今年3月末で約8,300件)が、そのノウハウを活かして、新たにリバースモーゲージを提供する金融機関を支援する例も出ている。また、リースバックで実績を上げたハウスドゥは、子会社のフィナンシャルドゥを通じ、金融機関がリバースモーゲージを提供する際、不動産の担保評価などで協力しようとしている。住んだまま自宅をお金に換えるためのノウハウが結集され、また、さまざまな事業者の競争によって、よりよいサービスにつながっていく素地が徐々に形成されようとしている。

 一方、現状は一定の年数が経つと土地だけの評価になってしまう住宅についても、将来的に、建物価値も含めて長く価値が保たれ、高齢期の資金調達にも役立つような住宅開発が行われ、かつ、実際にそうした住宅が購入されるようになれば、住宅供給面でもリバースモーゲージが利用しやすくなる環境が次第に整っていくことになる。住宅供給業者と金融機関の今後の取り組みに期待したい。
(文=米山秀隆/富士通総研経済研究所主席研究員)

米山秀隆/住宅・土地アナリスト

米山秀隆/住宅・土地アナリスト

1986年筑波大学第三学群社会工学類卒業。1989年同大学大学院経営・政策科学研究科修了。野村総合研究所、富士総合研究所、富士通総研等の研究員を歴任。2016~2017年総務省統計局「住宅・土地統計調査に関する研究会」メンバー。専門は住宅・土地政策、日本経済。主な著書に、『世界の空き家対策』(編著、学芸出版社、2018年)、『捨てられる土地と家』(ウェッジ、2018年)、『縮小まちづくり』(時事通信社、2018年)、『空き家対策の実務』(共編著、有斐閣、2016年)、『限界マンション』(日本経済新聞出版社、2015年)、『空き家急増の真実』(日本経済新聞出版社、2012年)など。
米山秀隆オフィシャルサイト

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