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他人の話を聞かない貴乃花親方引退、相撲協会が恐れる「暴露」…飼い殺しに失敗

文=稲垣翼/ライター
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他人の話を聞かない貴乃花親方引退、相撲協会が恐れる「暴露」…飼い殺しに失敗の画像1引退会見を開く貴乃花親方(写真:日刊現代/アフロ)

 大相撲秋場所の終了後、引退会見を開いた貴乃花親方。日本相撲協会を退職する理由について、「相撲協会から告発状は事実無根であるとの有形無形の圧力を受けてきた。認めないと親方を廃業せざるを得ないという有形無形の働きかけを受けてきた」と語った。

 これに対して、相撲協会は広報部長の芝田山親方(元横綱大乃国)が会見を開き「告発状の内容について事実無根と認めろ、などと言ったことはない」「5つある一門(出羽海、二所ノ関、高砂、時津風、伊勢ケ浜)のいずれかに属さないと廃業しなければならないという圧力をかけたこともない」と反論した。また、部屋として無所属を認めないのは「公益法人である協会の透明性を保つため」と説明している。

 貴乃花親方が相撲協会と対立した背景には、何があったのか。根底には、貴乃花親方の「力士同士の馴れ合いを一掃したい」との思いがあったようだ。

 現役を引退して一代年寄となった貴乃花親方は、協会の運営や部屋のあり方について持論を唱えてきた。2010年には相撲協会の理事候補選挙に立候補して当選、その後は「相撲協会の改革」を旗印にしてきた。相撲関係者が解説する。

「親方は、現役時代から自身の信念に従って生きてきました。さまざまな場面で『横綱とは孤高の存在でなければならない』との自負を感じたものです。“平成の大横綱”として相撲道を極めた結果、22回もの優勝を果たしたわけですが、その栄光が常に“ガチンコ”によるものだったことは、好角家ならわかるでしょう」

 11年、現役力士のメールのやり取りから発覚した八百長問題では20人以上の力士が引退を余儀なくされた。相撲協会の役員は報酬を自主返納し、事実関係を解明するための特別調査委員会が設置されたほか、同年春場所の開催は中止となった。翌夏場所も「技量審査場所」として開催されるなど、大相撲の存立にかかわる前代未聞の不祥事であった。

 この件に関して貴乃花親方が口を開くことはなかったが、「真剣勝負で大横綱になった」という自負があると同時に、それゆえ忸怩たる思いを抱えていたことは想像できる。そんななか、昨年10月には日馬富士の暴行事件で弟子の貴ノ岩が被害を受け、それをきっかけにモンゴル人力士たちの八百長疑惑まで浮上した。

「親方は力士同士の馴れ合いを嫌ったのです。モンゴル人力士たちが頻繁に集うことに嫌悪感を示したのも、土俵の上で戦う者同士がつるむな、との考えによるものです」(前出の相撲関係者)

 この暴行事件がきっかけで相撲協会と対立することになった貴乃花親方の心中には、「胸を張って真剣勝負と言えるようにするべき」との思いがあったのではないだろうか。

「村社会の相撲界は、和を乱す存在を徹底的に嫌います。親方は協会と事あるごとに対立し、日馬富士の暴行事件で溝は修復不可能なところまで深まりました。あまりに突っ走るので、最終的には貴乃花親方を支持してきた親方衆まで離れていき、協会からの情報は一切入ってこなくなりました」(同)

 自分の考えを正しいと信じ、人の言うことに耳を傾けない。今回の騒動の背景には、そんな貴乃花親方の気質も少なからず関係しているようだ。現役時代は土俵の上で結果を出せば何も言われなかったが、親方となればそうはいかない。

 日馬富士の暴行事件における相撲協会の対応を問題視した貴乃花親方は内閣府に告発状を提出したが、その後に発覚した弟子の暴行事件で事態は一変する。告発状を取り下げたものの、相撲協会から吊るし上げを食らう事態となった。

貴乃花親方の“飼い殺し”に失敗した相撲協会

 今年7月、相撲協会は理事会で「すべての親方は5つの一門のいずれかに所属しなければならない」と決定した。「協会から各一門に助成金が支給されている以上、無所属の親方がいるのは体裁が悪い」との理由だが、無所属の貴乃花親方にとっては明らかに逆風だ。また、8月には、弁護士を通じて貴乃花親方のもとに「告発状は事実無根」と記された書面が届く。これらの動きは、貴乃花親方としては到底受け入れられないものであっただろう。

「協会は親方を無力化させようとしましたが、処遇を誤った感があります。結果的に親方を追い詰めてしまい、協会を辞める決断をされてしまったわけですから。協会の外に出てしまえば、今後は親方の言動を誰もとがめられなくなります。協会にとって“余計なこと”を暴露される可能性も十分にあるわけです」(同)

 日馬富士による暴行事件の後、1月に理事を解任された貴乃花親方は、2月の理事選に立候補するも落選した。その後、テレビ朝日の特番で単独インタビューに応じ、相撲協会が「無許可のまま放送された」「肖像権を侵害された」と激怒する事態となったが、今後はそうした介入もやりづらくなるだろう。

「協会としてベストの選択は、親方を“一兵卒”のままにしておくことだったのです。ただでさえ人気者ですし、審判員として土俵下に座るだけで拍手が起きる存在ですから。悪く言えば“飼い殺し”が最善の策だったわけですが、協会は失敗してしまったといえます」(同)

 秋場所の終了後、貴乃花親方が協会との決別を匂わす文章をホームページに載せると、協会幹部はあわてて説得工作に動いたようだが、時すでに遅し。頑なに自身の考えを貫く貴乃花親方の行動にも問題はあったといえるが、相撲界きっての人気者をうまく生かす寛容さが相撲協会になかったことも、一連の騒動の根底にあるのではないだろうか。

 協会はいまだ貴乃花親方が提出した引退届を受理しておらず、書類の不備を指摘している。書類が揃えば、10月1日に開かれる臨時理事会で貴乃花親方の退職および弟子の移籍が承認される見込みだが、果たしてどうなるか。
(文=稲垣翼/ライター)

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