貴乃花親方の“飼い殺し”に失敗した相撲協会

 今年7月、相撲協会は理事会で「すべての親方は5つの一門のいずれかに所属しなければならない」と決定した。「協会から各一門に助成金が支給されている以上、無所属の親方がいるのは体裁が悪い」との理由だが、無所属の貴乃花親方にとっては明らかに逆風だ。また、8月には、弁護士を通じて貴乃花親方のもとに「告発状は事実無根」と記された書面が届く。これらの動きは、貴乃花親方としては到底受け入れられないものであっただろう。

「協会は親方を無力化させようとしましたが、処遇を誤った感があります。結果的に親方を追い詰めてしまい、協会を辞める決断をされてしまったわけですから。協会の外に出てしまえば、今後は親方の言動を誰もとがめられなくなります。協会にとって“余計なこと”を暴露される可能性も十分にあるわけです」(同)

 日馬富士による暴行事件の後、1月に理事を解任された貴乃花親方は、2月の理事選に立候補するも落選した。その後、テレビ朝日の特番で単独インタビューに応じ、相撲協会が「無許可のまま放送された」「肖像権を侵害された」と激怒する事態となったが、今後はそうした介入もやりづらくなるだろう。

「協会としてベストの選択は、親方を“一兵卒”のままにしておくことだったのです。ただでさえ人気者ですし、審判員として土俵下に座るだけで拍手が起きる存在ですから。悪く言えば“飼い殺し”が最善の策だったわけですが、協会は失敗してしまったといえます」(同)

 秋場所の終了後、貴乃花親方が協会との決別を匂わす文章をホームページに載せると、協会幹部はあわてて説得工作に動いたようだが、時すでに遅し。頑なに自身の考えを貫く貴乃花親方の行動にも問題はあったといえるが、相撲界きっての人気者をうまく生かす寛容さが相撲協会になかったことも、一連の騒動の根底にあるのではないだろうか。

 協会はいまだ貴乃花親方が提出した引退届を受理しておらず、書類の不備を指摘している。書類が揃えば、10月1日に開かれる臨時理事会で貴乃花親方の退職および弟子の移籍が承認される見込みだが、果たしてどうなるか。
(文=稲垣翼/ライター)

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