NEW
航空経営研究所「航空業界の“眺め”」

ボーイング、14年ぶり新型機「B797」開発で苦悩…完成時にはエアバスが市場独占の懸念も

【この記事のキーワード】

, ,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 さらに、新型のエンジン装備により、さらなる低燃費と時代の要請である静粛性を含む高い環境適合性が実現される。また、胴体や翼は、B787と同様、金属から複合材となる。その一方で、経済性が重視されるため、機体価格もナローボディ機並みに抑えられるもようだ。最近、80%の資本を買収し支配下に置いたブラジルのエンブラエル社の安くて良質なエンジニアを人的リソースとして活用し開発費を抑えることになるだろう。

エアバスによる強烈なカウンターと駆け引き-A321neo/A321LRの改造計画


 一方のエアバスは当然のことながら、黙ってはいない。「ボーイングの抱く中間市場の存在は幻想だ。すでにA321neo/A321LRがあり、もしワイドボディが欲しければA330neo-800(300席クラス)があるので、この市場は充足されている」と、ボーイングの構想を一蹴する。さらに、エアバスは、A321LRを改良し航続距離を4500海里まで延長したXLR(エクストラ・ロング・レンジ)を2022年に市場に出すことを検討すると、6月に発表した。つまり、B797の3年前に改良版を出して市場をさらに侵食し「B797が出てくる頃にはもう市場は残っていない」とボーイングを牽制、というより脅しをかけている。相手を降ろしにかかるポーカーゲームの駆け引きであり、チキンレースの様相だ。

 航空業界では、エアバス以外にもボーイングに対して懐疑的な声も少なくない。「2025年の実現は無理。実現できても市場が残っていないだろう」「中途半端なワイドボディより、むしろまっさらな新型ナローボディをつくって胴体を延長するほうが合理的だ」「貨物が少ないのは、ワイドボディとして魅力半減」などである。

 ボーイングとしては、このまま何もせず中間市場をエアバスが支配するのを看過するわけにもいかず、かといって新たなワイドボディを開発しても成功する保証はない。「悩める巨人、ボーイング」なのである。

 しかしながら、ボーイングとして大きな拠りどころは、旅客の快適性志向とワイドボディ機選好性である。旅客の強い支持が見込まれ、さらに価格もリーズナブルで最新のテクノロジーで経済性も従来機より高ければ、たとえ2025年と登場は遅くとも、多くのエアラインが採用してくれるものと、ボーイングは踏んでいるのであろう。
 
 これまで、ボーイングは多くのワイドボディ機を開発し世に送りだしてきた。B747(1970年)、B767(1982年)、777(1995年)、787(2011年)という新たなコンセプトで時代を画した旅客機は、いずれも成功を収め、民間航空の発展に寄与してきた。その意味で、新たなコンセプトの新型ワイドボディ機B797の登場が期待される。遅くとも、来年にはローンチ、あるいは断念のニュースが聞けるはずである。
(文=橋本安男/航空経営研究所主席研究員、桜美林大学特任教授、運輸総合研究所客員研究員)

ボーイング、14年ぶり新型機「B797」開発で苦悩…完成時にはエアバスが市場独占の懸念ものページです。ビジネスジャーナルは、連載、B797エアバスボーイングの最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!

BJ おすすめ記事