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『西郷どん』もはやドラマではない!ブツ切りエピソードを並べるだけの劣悪脚本に呆然

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『西郷どん』公式サイトより

 鈴木亮平が主演を務めるNHK大河ドラマ『西郷どん』の第38回「傷だらけの維新」が14日に放送され、平均視聴率は10.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だった。初の1桁台(9.9%)を記録した前週からわずかに数字を戻したものの、浮上の兆しは見えない。

 今回は、西郷吉之助(鈴木)の弟・吉二郎(渡部豪太)が越後で戦死した史実を基に、終わりの見えない戦争が吉之助にもたらした深い悲しみを描いた。城勤めをしながら西郷家を守り続けてきた吉二郎は、「自分も侍らしく戦働きがしたい」と吉之助に申し出る。戦場で大けがを負い、生死をさまよったことのある信吾(錦戸亮)は「やめておけ」と忠告するが、吉二郎の意志は固く、ついに吉之助も彼の言い分を聞き入れる。

 ところが、吉之助が軍議を開いている最中に、吉二郎が撃たれたとの知らせが届く。信吾は「兄の顔を見れば元気が出るはず」と、急いで見舞いに来るように求めるが、吉之助は「兵の命は皆同じじゃ」と言い放ち、軍議を続ける。

 この流れ、つい最近も信吾が撃たれた場面で見たばかりである。なぜ、もう一度繰り返したのだろうか。前回は、弟も見殺しにするような冷酷な人間になってしまったかと視聴者に思わせ、実際はそんなことはなかったというストーリーになっていた。これはわかる。

 だが、身内だからといって特別扱いしない、という展開をもう一度繰り返されても、「どうせ本心は違うんだろう」としか思えない。同じ展開を2回やったせいで、一見冷酷に見える吉之助の台詞が無意味なものになっているのだ。制作陣の誰も、こんな脚本は良くないと止めなかったのだろうか。はなはだ疑問だ。

 結局、吉二郎は見舞いに来た吉之助の目の前で息を引き取った。ここで余韻に浸る間もなく、驚愕の展開が待っていた。西田敏行による「この後も会津、庄内、そして箱館と戊辰の戦は続きました」とのナレーションで、戊辰戦争が終結してしまったのだ。これはひどい。吉之助が「終わりの見えない戦い」に疲弊していく様子が今回のテーマだと思っていたのに、省略されてあっという間に終わってしまった。こんなところでやめるのなら、上野戦争も北越戦争も描かず、江戸無血開城で終わらせておけばよかったではないか。

 あっけに取られているうちに、舞台は明治元年10月の江戸城内に移り、向かい合って座る吉之助と大久保一蔵(瑛太)の姿が映し出された。当初は互いの労をねぎらう雑談を繰り広げていた2人だが、突如として吉之助から爆弾発言が飛び出す。「おいは薩摩に帰らせてもらいたか」というのだ。思わず、「は?」と声が出てしまった。この男は何を言っているのだろうか。

 もちろん、西郷隆盛が新政府から距離を置き、薩摩に帰ったのは史実である。だが、史実をなぞるだけでは、ドラマとはいえない。なぜ西郷が政府を去って薩摩に帰ろうと考えたのか、その心の動きを描くのがドラマというものだろう。いきなり弟が戦死し、いきなり戦争が終結し、いきなり「薩摩に帰る」と言い始めた――という展開を「ドラマ」と呼ぶのは、非常に苦しい。やはり今回も、ぶつ切りになったエピソードを並べるだけの映像になってしまった。

 モヤモヤしたまま本編の視聴を終え、次回予告の後に流れる『西郷どん紀行』を見た。吉二郎が長岡での戦いで死に、上越市にある薩摩藩の合祀墓に名前が刻まれていることが紹介された。結びのナレーションは、次のようなものだった。

「かけがえのない存在を失った西郷は、失意の中、政治から距離を置くことになるのです」

 これを聞いて、「なるほど、そういうことを描きたかったのか」と、ようやく腑に落ちた。だが、だとしたら脚本が下手すぎる。吉二郎の死と、西郷が薩摩に帰ると言い始めたことが劇中でまったくリンクしていないからだ。吉二郎の死後、大義のためとはいえ、多くの犠牲を出しながら戦争を続けることに苦悩し続ける西郷の姿を少しでも描いておけば、すんなりつながったはずだ。あるいは、何事かをじっと思い悩むカットを数秒はさむだけでもよかったかもしれない。いずれにせよ、『紀行』のナレーションでフォローしてもらわなければ意図が伝わらない脚本は、放送するレベルに達していないといえよう。

 さて、『西郷どん』は次回の39回から「明治編」となり、鈴木亮平も私たちがよく知っている西郷の風貌になる。さらに、初回からナレーションを務めてきた西田敏行が西郷隆盛の息子・菊次郎役で出演するとのことで、予告編を見る限り映像的には楽しそうだ。映像のおもしろさに脚本が付いてくることだけを望みたい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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