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中国、江沢民と李鵬が重篤…習近平の失脚狙う権力闘争激化か 米中貿易戦争重なり混沌

文=相馬勝/ジャーナリスト
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中国、江沢民と李鵬が重篤…習近平の失脚狙う権力闘争激化か 米中貿易戦争重なり混沌の画像1江沢民氏(右)と習近平氏(写真:ロイター/アフロ)

 中国の長老指導者、江沢民元国家主席が危篤状態に陥った模様だ。江氏は92歳で、糖尿病や心臓病などの持病を抱えているといわれる。最近は上海の高級幹部専用の病院に入院し、意識混濁などの症状が伝えていたが、16日には江氏の親族が続々と病院に入っていくのが見られたという。中国問題専門の中国語ニュースサイト「博聞新聞網」が伝えた。

 また、長老指導者の一人で89歳の李鵬元首相も心臓病や糖尿病という持病が悪化し、10月の党大会後、北京の中国人民解放軍直属の301病院に入院しており重篤な症状を呈しているという。江、李の両長老指導者に、もしものことがあれば、習近平国家主席の追い落としを狙って権力闘争が激化する可能性も出てくるとみられる。

習近平批判の高まりが予想

 上海の消息筋が博聞新聞網に明かしたところでは、江氏は今月初めから意識が混濁し呼吸困難に陥り、危篤状態に入っていたが、習氏の指示で、病院内で「特別医療グループ」が組織され、24時間態勢の緊急治療に入っているという。

 ところが、16日には江氏の容態が急変したことから、医師団が病院の事務局に江氏の親族を呼ぶよう要請。病院には続々と親族らが集まってきたという。また、江氏の重篤な状態については、習氏ら最高指導部にも伝えられている。習氏は16日、英国の48グループクラブのスティーブン・ペリー(STEPHEN PERRY)議長と北京の人民大会堂で会談。17日午前には北京で行われた会議に出席しており、北京に留まっていることが確認されている。

 博聞新聞網は江氏同様、これまでもいく度となく重病説が出ている李氏も重篤な状態で入院中と伝えており、江氏ばかりでなく、李氏も相次いでマルクスに会いに行くとなると、長老指導者間のバランスが崩れるのは必至だ。中国共産党総書記を務めた長老指導者としては胡錦濤元主席が存命だが、胡氏と習氏はライバル関係で、両者の不仲は有名だ。

 江氏はもともと習氏の後見役的な人物で、習氏が最高指導者に上り詰めたのも江氏の強力なバックアップがあったからといわれているほか、李氏との関係も悪くない。しかし、習氏の前任者だった胡氏と親しい温氏、さらに温氏を後継者に指名した朱鎔基前首相らの長老グループは習近平指導部の政策に批判的といわれる。

 これら胡錦濤グループは、習氏が今年3月の全国人民代表大会(全人代=国会に相当)で国家主席の任期を撤廃し、習氏の終身主席の道を開いたことについてきわめて批判的だ。このため、江氏と李氏が不在となれば、必然的に胡氏らのグループの発言力が強くなり、陰に陽に習近平批判が高まることが予想される。

 とりわけ、習氏がトランプ米大統領と対抗して米中貿易戦争が激化していることで、中国経済の成長スピードが減速し、経済悪化を招きかねない状況に陥っていることについて、中国内では批判が強まっているときだけに、状況次第では習氏が胡氏らによって足元をすくわれることも考えられる。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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