山崎将志「AIとノー残業時代の働き方」

私の友人が、赤字垂れ流しの介護施設をことごとく黒字化させた秘密

「Gettyimages」より

利益率の低いビジネスにあえて参入した私の友人

     
 視点を変えると物事はまったく違って見えるものです。私の仕事仲間で、介護ビジネスを次々と再生させている友人の話を聞きながら、つくづくそう思いました。

 介護関連産業は成長産業だといわれています。都内の住宅地にある私の自宅の近くにも有料の高齢者住宅や各種介護施設がたくさんあり、朝夕には「●●ケアサービス」などと屋号が書かれたワゴン車が高齢者の送迎をしています。

 高齢者の数は確実に増えていて、また公的な支出も確約されていることから、産業としては魅力的に見えます。しかし、個別の企業に焦点を当てると介護関連ビジネスの実態は相当に厳しいという印象があります。私がそう考える理由は主に3つあります。

 まず人材の確保が非常に難しい点です。かなりの重労働である割に介護報酬が低く抑えられているからです。他の仕事と比べて高い給料を払うことができないため、優秀な人材を集めようと思えばなおさらです。十数年前に介護事業の担い手を増やそうと、主に東南アジアの人々を対象に「研修制度」と称して人材を輸入しようという試みもありましたが、日本語の試験が非常に難しかったため、ほとんど合格できなかった、という状況もあります。

 また、施設としてサービスレベルを上げようとしても、介護報酬に国が定めた上限があるため、企業努力によって利益率を上げられる部分が、非常に少ない点も挙げられます。それによって、会社としてサービスレベルを上げるモチベーションが上がりづらいといえます。経営側が、どちらかといえばコスト削減に走りがちな事業構造です。

 それでも成長しようと考えれば、人件費を抑制するための設備投資くらいしか残された選択肢がありません。設備投資が十分なリターンを生むには回転率を上げるしかないのですが、従業員の数は増えませんし、施設の規模を拡大すると、これまた桁違いの投資が必要となってしまいます。

 私がざっとこんな考えを話すと、その介護施設を再生させている友人は、「その通りです。でもね、私はだからこそチャンスだと思うのです」と言います。私が「では、何がポイントなんですか?」と尋ねると、彼はこう答えました。

「はっきり言って、人ですわ」

山崎将志/ビジネスコンサルタント

ビジネスコンサルタント。1971年愛知県生まれ。1994年東京大学経済学部経営学科卒業。同年アクセンチュア入社。2003年独立。コンサルティング事業と並行して、数社のベンチャー事業開発・運営に携わる。主な著書に『残念な人の思考法』『残念な人の仕事の習慣』『社長のテスト』などがあり、累計発行部数は100万部を超える。

2016年よりNHKラジオ第2『ラジオ仕事学のすすめ』講師を務める。


最新刊は『儲かる仕組みの思考法』(日本実業出版社)

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