山崎将志「AIとノー残業時代の働き方」

私の友人が、赤字垂れ流しの介護施設をことごとく黒字化させた秘密

成長企業はできない人から辞めていき、衰退企業はできる人から辞めていく

     
 企業は人である―――あまりにも当たり前過ぎる言葉に、私は少しばかりがっかりしてしまいました。しかし、それに続く友人の説明を聞くうちに、私は自分のほうが先入観にとらわれた、ありきたりの考え方しかできていないことを思い知らされることになります。

 ある時期から、その友人のところに施設を買ってほしい、なんとかしてほしいという相談が入り始めました。当時の彼は介護ビジネスについてはまったくの門外漢でしたので、とりあえず持ち込まれた相談に関して関係者の話を聞くことから始めました。

 まず、すぐにはっきりしたこととして、彼のところに相談に来た介護施設の経営者は全員ダメだったと言います。先ほどお話したシロウトの私でも思いつくような理由を説明し、人によっては数字付きで詳細な分析を加えて、自分以外のせいばかりにします。

 また、そうした経営者は、例外なく現場の仕事内容を具体的に把握していませんでした。そのため、現場の介護士から改善の提案が上がってきても、それがどう成果につながるのかイメージが湧かないために改善が行われません。当然、介護士の気持ちも理解できませんから人がついてこずに、短期間で辞めてしまいます。このような施設で働く現場の介護士も、たいていレベルが劣る人材が残りがちです。

 一般論として、成長している企業はできない人から辞めていきますが、業績の悪い企業はできる人から辞めていきます。まさにその典型でした。

 それでも、いくつか見た施設のなかに、経営者はダメだけれど、やる気があって能力の高い介護士が何人か残っている施設がありました。自分の仕事に対してプライドを持ち、現状に対して愚痴を言うのではなく、「こうすればよくなる」と具体的な提案を持っていました。さらに、まったく定性的で主観的ですが、彼の表現を借りると「目がキラキラしていて、性格がいい」。この人たちなら、もしかするとうまくいくかもしれないと感じ、その施設をほとんどタダ同然で買い受けることにしたと言います。

 友人が経営を引き受けるようになってからは、現場の介護士の提案を3カ月以内にすべて実現しました。やる気があって能力の高い人たちの提案は現実的かつ建設的で、その施設の収益の範囲で実行可能なことばかりでした。それに加えて、友人の提案で人間関係やコミュニケーションに関する研修を、外部講師を雇って週に1回、業務時間内に行いました。

山崎将志/ビジネスコンサルタント

ビジネスコンサルタント。1971年愛知県生まれ。1994年東京大学経済学部経営学科卒業。同年アクセンチュア入社。2003年独立。コンサルティング事業と並行して、数社のベンチャー事業開発・運営に携わる。主な著書に『残念な人の思考法』『残念な人の仕事の習慣』『社長のテスト』などがあり、累計発行部数は100万部を超える。

2016年よりNHKラジオ第2『ラジオ仕事学のすすめ』講師を務める。


最新刊は『儲かる仕組みの思考法』(日本実業出版社)

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