「本当に4割も値下げをすれば、ネットワークの品質は今より下がることになるでしょう。先日、北海道で起きた大地震のときもそうでしたが、現在の大手3社は、震災があった地域でも迅速に通信を復旧できる体制を構築しています。値下げによって収入が下がれば、そういった非常時の対策コストが削られる可能性は十分に考えられます。結果、震災時に電波が入らなくなってしまったり、その後の復旧に大幅な時間がかかるようになってしまうかもしれません」(同)

本当に必要なのは値下げではなく、競争が促進される環境整備

 また、安易な大手3キャリアの値下げは、むしろ携帯市場を崩壊させる可能性があるのではないかと石川氏は語る。

「現在の携帯市場は、料金は高いが昼間でも通信が安定していて、サポート体制もしっかりしている大手3キャリアと、昼間は通信が安定しないことがあり、またサポートも手薄ですが、その分料金は安い格安スマホとでうまく棲み分けがなされています。

 ですが、大手3キャリアの値下げが行われていけば、格安スマホを選ぶ理由はなくなっていきますから、当然、格安スマホ事業者は厳しい立場に追い込まれていくでしょう。ただでさえ格安スマホは薄利多売なビジネスモデルだというのに、さらにユーザーが増えないといった事態になると、撤退する事業者が出てくることも考えられます。結果、格安スマホの事業者がいなくなって、最終的には大手3キャリアしか残らないという状況になってしまう恐れもあります」(同)

 では、携帯電話業界の発展のため、政府がとるべき行動とはどのようなものなのだろうか。

「今の携帯電話業界において競争を鈍らせている原因となっているのは、キャリアの乗り換えが容易でないこと。ですから政府は、競争を促進する環境整備をするべきでしょう。

 1つ例を挙げるなら、通信キャリアを変更する際、使っている電話番号をそのまま引き継げるナンバーポータビリティ制度などがそうです。仮にA社からB社に契約を変更しようとした場合、アメリカでは、B社に直接行けばナンバーポータビリティの手続きもすべてやってもらえるのですが、現在の日本では、まずA社に連絡をして手続きする必要があり、単純に手間がかかります。そのうえ、A社は引き留めようとポイントのサービスなどアレコレ提案してくるので、けっきょく契約変更自体をやめてしまう人も少なくありません。

 単純に値下げを強要するよりも、ユーザーがキャリアを変更しやすい環境を整備するほうが、携帯市場の発展に効果があるのではないでしょうか」(同)

 波紋を呼んだ菅氏の今回の発言は、携帯電話業界にどのような影響を及ぼすことになるのだろうか。携帯電話の一ユーザーとしては、業界がさらなる発展を遂げ、よりよいサービスが安価で利用できるようになることを望むばかりだ。
(文・取材=後藤拓也/A4studio)

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