しかも番外編資料には撤退に伴う諸費用の見積もりも記されており、その総額は110億円あまり。さらに設備運搬などの費用が別途必要になる。これに対して5月の発表では約40億円と記されており、大きな隔たりがある。撤退が目立たないように費用計上を意図的に小さく発表したのであれば、投資家と中国人従業員に対する重大な背信行為だろう。

 そうした意図があったことを明確に裏付けるのは、深セン子会社とその移管先であるベトナム子会社の事業計画を2通り作成していることが記されている点だ。深セン撤退には、中国人従業員に示す「表(計画)」と秘密裏に推し進める「裏(計画)」の2通りがあり、番外編資料には「『表』計画はOSZを縮小し継続するダミー計画」と記している。「(表と裏を)同時に策定中」「(裏計画が)開示者以外に絶対に流出しないような慎重なコントロールを展開中」との、かなりきわどい記述もあり、呆れるばかりだ。しかも過去に社外流出した各種資料と突きあわせると、ここでの議決内容が取締役会議事録に残されていない疑いも出てくるのだ。

 売却先の選定についても記述があり、民間企業の「新国都社」と、野村総研から提案があった国営企業の「深セン投資控股有限公司」のどちらかに売却を予定(昨年12月現在)している。やはり「操業停止」ではなく、「完全撤退」なのだ。

証券取引等監視委が強い不信感

 実はこの話には続きがある。この「番外編」の資料は8月のうちに証券取引等監視委員会に持ち込まれているのだ。詳細についての記述は避けるが、オリンパスの開示姿勢に対して監視委が以前から強い不信感を抱いているのは確かだ。

 5月からオリンパスの大株主には「物言う株主」として恐れられるバリューアクト・キャピタルが名を連ねるようになった。大株主が取締役会議事録や番外編の開示を求めたら、オリンパスはどうするつもりなのだろうか。

 止まらない内部告発と、国内外で厳しくなる一方の監督当局の目、大株主のアクティビストの参戦――。オリンパスをめぐる疑惑について、注目しなければならないのは裁判の成り行きだけではないのだ。米国の司法当局もオリンパスに対して、深センに関連する文書の保全を命じており、これが何を意味するかは容易に想像がつく。今後はなんらかの動きがあり次第、随時報じていきたい。
(文=山口義正/ジャーナリスト)

●山口義正
ジャーナリスト。日本公社債研究所(現格付投資情報センター)アナリスト、日本経済新聞記者などを経てフリージャーナリスト。オリンパスの損失隠しをスクープし、12年に雑誌ジャーナリズム大賞受賞。著書に『サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件』(講談社)

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