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三浦展「繁華街の昔を歩く」

子どもがいる夫婦と他人が暮らすシェアハウス 100万円で家を買い週3日働く女性 

文=三浦展/カルチャースタディーズ研究所代表

1.リノベーションをして住む

 当サイトでの連載も含めた各種レポートをまとめた拙著『100万円で家を買い、週3日働く』が10月16日に光文社から出版された。タイトルになっている「100万円で家を買い」は横須賀の丘の上に築60年以上の平屋の一戸建てを100万円で買った女性の話。主要な道路から坂道を歩き、最後に階段を140段も昇らないとたどり着かないところに建っているため、高齢者の増えた現代では買い手が付かず、安く売られていたのだ。それを、リノベーションが好きな彼女は2年ほどかけて自らの手で改修し、自分好みの家を造ってしまった。

 せっかく自分が気に入った家を造ったのだから、家で過ごす時間を増やしたいと、週5日働いていた会社を、社長に交渉して週3日だけ働く条件に変更。さらに今年は週1日しか働かなくなったという。
 
 もちろん彼女はこの家とは別に、浅草のほうにリノベーションしたシェアハウスを経営している。そこからの収入もあるからできる生活ではあるのだが、しかし、なんと彼女は横須賀の家を友人2人に貸し、今は沼津に移住してしまった。

子どもがいる夫婦と他人が暮らすシェアハウス 100万円で家を買い週3日働く女性 の画像1『100万円で家を買い、週3日働く』(三浦展/光文社新書)


 家を買う、所有するということに重きを置く価値観が彼女にはないのだ。

 房総に8700坪の土地を買った女性は、最初は生物好きな子どものために田舎暮らしを考えて、最後にたどり着いたのが房総の土地付き、山付き、墓地付き農家の古民家だった。そこで10年ほど子どもと夫で週末暮らしをし、動物、植物、農業とふれあい、川遊びをし、満天の星を眺める暮らしをした。

 子どもたちは成長し、生き物遊びはしなくなったが、彼女は房総をもっと多くの人に知ってほしいとNPOを立ち上げ、東京など都会の子どもたちの自然体験学習を企画するなど精力的に活動している。

子どもがいる夫婦と他人が暮らすシェアハウス 100万円で家を買い週3日働く女性 の画像2房総に8700坪を買って週末暮らし

2.生活を見直す

 福岡県の糸島市に東京から移住した女性もいる。彼女は古民家を借りてシェアハウスを運営し、夫とシェアメイト数人と暮らしている。春夏はコメをつくり、梅やビワなどを収穫し、冬にはイノシシを狩猟して自分でさばいて食べるという暮らしをしている。

 シェアメイトは外国映画の字幕づくり、デザインなどの仕事をしている。パソコンさえあれば世界中とつながって仕事ができるから、田舎暮らしでも大丈夫なのだ。

子どもがいる夫婦と他人が暮らすシェアハウス 100万円で家を買い週3日働く女性 の画像3大きな農家をシェアハウスにする

 以上の3人の女性に共通しているのは、3.11の震災が自分の価値観を見直す大きな契機となっていることだ。自分たちの暮らしが自分たちの知らないうちに、見えないところで動かされている、ということへの恐怖と反省が彼女たちにはあるのだ。自分たちの使う電力が福島や新潟などの地方につくられたたくさんの原発に支えられていること、それらの土地が東京で消費をする食糧も供給していること、それをあまり意識せずに暮らしてきたことへの反省。

三浦展/カルチャースタディーズ研究所代表

三浦展/カルチャースタディーズ研究所代表

82年 一橋大学社会学部卒業。(株)パルコ入社。マーケティング情報誌『アクロス』編集室勤務。
86年 同誌編集長。
90年 三菱総合研究所入社。
99年 「カルチャースタディーズ研究所」設立。
消費社会、家族、若者、階層、都市などの研究を踏まえ、新しい時代を予測し、社会デザインを提案している。
著書に、80万部のベストセラー『下流社会』のほか、主著として『第四の消費』『家族と幸福の戦後史』『ファスト風土化する日本』がある。
その他、近著として『データでわかる2030年の日本』『日本人はこれから何を買うのか?』『東京は郊外から消えていく!』『富裕層の財布』『日本の地価が3分の1になる!』『東京郊外の生存競争が始まった』『中高年シングルが日本を動かす』など多数。
カルチャースタディーズ研究所

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