ビジネスパーソン向け人気連載|ビジネスジャーナル/Business Journal

新築マンションを買う場合、たいていは現場近くの販売センターに行って、センター内に設けられたモデルルームを訪ねるのが一般的だ。
販売センターの中に設けられるモデルルームは、せいぜい1つないし2つだ。マンション価格はずいぶん高くなった。東京都内であれば、売り出されるマンションの平均価格が7000万円台にまで高騰している。こんなに高い買い物をするのに、消費者はまだ出来上がってもいないマンションのモデルにすぎない部屋を1つ2つ見せられるだけで購入を決断している。住宅がまったく不足している時代であればいざ知らず、なぜこんな販売形態がいまだにまかり通っているのだろうか。
デベロッパーの立場からいえば、モデルルームを建設するのは実は相当おカネがかかるのだ。まず販売センターは建設現場内ではなかなか確保ができないので、現場近くの空き地を探して、これを借り受ける。通常は土地について、一時賃貸借契約を結んで販売期間中、地主へ賃借料を支払って借り受けることとなる。
そしてこの土地の上にモデルルームを含む販売センターを建設することになるが、この建設費が馬鹿にならない。モデルルームや販売センターの内容にもよるが、販売センターの建設費は数千万円にも及ぶ。もちろんこの経費は、土地の賃借料とあわせて、販売コストとしてマンションの販売価格に上乗せされているのはいうまでもない。
消費者にとっては、「まだ見えぬ」仮想のマンションについて、このわずか1つないし2つのモデルルームをみて「おおよそ」の判断をせよと迫られているわけだ。
高い買い物を「おおよそ」の判断で買う
考えてみればこれはおかしな話だ。マンション1戸買うのは一世一代の大イベント。大金をかけて自らの「夢」を買うのに、消費者は実物を見ずにこれを買うことになる。これは明らかに「買う」側の消費者にとって不利な取引ではないだろうか。
たとえば12階の5号室が希望住戸だったとする。これを買う消費者はまず、自分たちが希望するのと同じ間取り、仕様の住戸がモデルルームになっているかを確認する必要がある。ところが、必ずしも自らが買いたい住戸とモデルルームがピタリと一致するわけではない。
同じような面積、間取りのモデルルームで「おおよそ」を確認するしかない。住むということは、住戸という空間だけでなく、日当たりや風通しだってチェックしたいところだが、モデルルームでは確認のしようがない。さらに、建物はまだ建設中だ。場合によっては、超高層マンションなどに多いのだが、まだ更地のままで、建設するのはこれからなどという場合もある。