NEW

糖尿病の女性、インスリンの自己注射で量を間違え植物状態に…

【この記事のキーワード】

, , ,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
「Getty Images」より

 北海道で、ある“医療ミス”が話題となっている。函館市のある病院で、下肢のむくみの精査・治療を目的として入院した91歳女性に対し、同室の同姓の糖尿病患者と間違えて8月23~25日に長時間作用型インスリンを14単位注射したというものだ。25日に血糖値が20mg/dLまで下がり、一時的に意識レベルが低下。急変した患者家族が糖尿病患者ではないことを指摘し、インスリン誤投与が判明した。

 幸い、ブドウ糖の注射などの処置にて意識が回復して、症状は落ち着いた。誤投与の発生原因は、担当医と看護師が患者双方のフルネームや患者識別番号(ID)の確認を怠ったことによる“基本的医療ミス”であった。 

 インスリンは1単位=0.01mLであるが、1単位=1mLと誤って認識したことで事故に至った例を、日本医療機能評価機構は2012年から17年8月までに3件報告している。インスリン:ヒューマリンR・4単位を4mLと間違えて皮下注射(100倍量)してしまった例や、研修医がヒューマリンR・0.5単位/時を持続点滴するべきところ、0.5mL(=50単位)/時と誤って投与を開始してしまった例もあった。

 その際、看護師はインスリンの量が過剰であるとの疑問を抱いたが、誰にも相談することなく点滴を開始してしまった。いずれの症例も低血糖、意識レベル低下に陥ったが、幸いにも生命に別状はなかった。医師や看護師の慎重なダブルチェックが必要であったものと思われる例だ。

 私が経験したのは、インスリンを大量に自己注射して、その後に重い代償を払った症例だ。58歳女性は、糖尿病のため2年前よりインスリンの自己注射にて治療を継続していた。ある日、普段から仲が悪かった夫と口論になり、その後インスリンを発作的に300単位皮下注射した。約20時間後に、外出していた夫が帰宅し、台所に倒れていた妻を発見。救急車を要請した。

 病院搬送時の血糖値は11mg/dLと極めて低値(空腹時の正常値は80~110mg/dL)で、昏睡状態にあった。ブドウ糖点滴などで、血糖値は110~150mL/minまで回復したが、10日間意識は回復しなかった。

 その後、発語、言語理解は不能となり経口摂取もできなかった。寝たきり状態が持続して、植物状態となり、頭部MRIにても不可逆性低血糖脳症と診断された。入院3カ月後に慢性療養型病院に転入院となった。 

 食生活の欧米化、運動不足などが原因となって、糖尿病に罹患する患者が爆発的に増加している。インスリン治療は、基本的には自己注射が行われている。治療開始とともに、インスリンの正しい注射法を医療スタッフが指導すること、特に投与量を間違えないことなどを徹底することが重要である。また医療従事者は、函館市で発生した誤投与のごとき医療サイドのミスには十分な配慮が必要であろう。
(文=横山隆/日本透析学会専門医)

横山隆 小笠原記念札幌病院腎臓内科。日本中毒学会認定クリニカルトキシコロジスト、日本腎臓学会および日本透析学会専門医、指導医。
1977年、札幌医科大学卒、青森県立病院、国立西札幌病院、東京女子医科大学腎臓病総合医療センター助手、札幌徳洲会病院腎臓内科部長、札幌東徳洲会病院腎臓内科・血液浄化センター長、2014年より札幌中央病院腎臓内科・透析センター長などを経て現職。「HEALTHPRESS」で「恐ろしい危険ドラッグ中毒」を連載。

糖尿病の女性、インスリンの自己注射で量を間違え植物状態に…のページです。ビジネスジャーナルは、ヘルス・ライフ、インスリン医療ミス糖尿病自己注射の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!

BJ おすすめ記事