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伊藤博敏「その裏に迫る」

安倍政権の巨大支持組織・神社本庁で内紛激化…靖国神社も天皇批判発言で異常事態

文=伊藤博敏/ジャーナリスト
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 その後を受けたのが、伊勢神宮で大宮司や少宮司を補佐する禰宜(ねぎ)に就いていた小堀邦夫氏である。が、小堀宮司も舌禍発言で退任を余儀なくされる。今年6月に行なわれた教学上の問題を検討する最初の会議で、天皇のサイパン、パラオ、フィリピンと続いた「慰霊の旅」について触れ、「そこに御霊はないだろう? 遺骨はあっても。違う?」と述べ、暗に靖国に参拝しない天皇を批判。このまま参拝がなければ、「今の皇太子さんが新帝に就かれて参拝されるか?」と懸念、それが「今上天皇は、靖国神社を潰そうとしている」という衝撃発言につながった。

 10月8日、この発言を報じた「週刊ポスト」(小学館)が発売されると、1週間も経たずに退任の意向が表明され、10月26日の総代会で後任が“徳川時代”にナンバー2の権宮司(ごんぐうじ)だった山口建史氏に決まった。「右翼思想の人で、そちらに幅広い人脈を持っているが、2代続けて舌禍発言でクビになっており、可もなく不可もない運営に徹するだろう」(有力神社神職)と予測する。

 A級戦犯の合祀以来、昭和天皇は1975年を最後に参拝を見送り、今上天皇もそれに倣うなど、小堀氏の指摘のように、靖国が天皇家から距離を置かれているのは事実だ。遺族会は高齢化、政治家の公式参拝も進んでおらず、「靖国を支える人」が少なくなっている。そうした歴史に埋没しそうな靖国を甦らせようとして足元をすくわれた感があるのが徳川、小堀の両宮司だった。明治も昭和も遠くなりつつある。

 神社本庁と靖国神社で起きている混乱は、突出した人間たちが巻き起こす悲喜劇ではあるが、底流にあるのは神社、神道、靖国とは何かの本質的論義を深める時期にきていることへの認識が、神社本庁幹部や単立の有力神社宮司らに欠けていることだろう。

 天皇の「御代替わり」に神社界は存在感を示し、国民の信頼と親しみを取り戻し、素朴な信仰をつなぎ止めることができるのか。残された時間は短い。早急に、新しい体制で立て直しを図る時期にきている。
(文=伊藤博敏/ジャーナリスト)

伊藤博敏/ジャーナリスト

伊藤博敏/ジャーナリスト

ジャーナリスト。1955年、福岡県生まれ。東洋大学文学部哲学科卒業。編集プロダクション勤務を経て、1984年よりフリーに。経済事件などの圧倒的な取材力に定評がある。著書に『黒幕 巨大企業とマスコミがすがった「裏社会の案内人」』(小学館)、『鳩山一族 誰も書かなかったその内幕』(彩図社)、『「カネ儲け」至上主義が陥った「罠」』(講談社)、『トヨタ・ショック』(井上久男との共編著・講談社)など。近著『同和のドン 上田藤兵衞 「人権」と「暴力」の戦後史』(講談社)。

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