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『西郷どん』視聴率は低迷も絶賛の声相次ぐ…「密かに脚本家が交代したのでは?」

文=吉川織部/ドラマウォッチャー
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 鈴木亮平が主演を務めるNHK大河ドラマ『西郷どん』の第42回「両雄激突」が11日に放送され、平均視聴率は前回から0.5ポイント減の11.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だった。

 西郷隆盛(鈴木)は、岩倉具視(笑福亭鶴瓶)や大久保利通(瑛太)らからなる使節団が欧米に滞在している間、江藤新平(迫田孝也)をはじめとする佐賀・土佐両藩の出身者らとともに留守政府を預かり、数々の近代化政策を推し進めていた。だが、1年半後にようやく帰国した大久保は、西郷と言い争いとなってしまう。大久保はその後しばらくは出仕せず鳴りを潜めていたが、使節団の本隊が帰国するや否や息を吹き返し、西郷に敵対する姿勢を明確に打ち出した――という展開だった。

 幼い頃から互いに支え合い、共に成長してきた「両雄」が、ついに決裂してしまった。第40話では並んで握り飯をほおばりながら「うんまか」「うんまかなあ」と笑い合っていたのに、そのわずか2話後には決定的に対立してしまうとは、実にはかない。

 視聴率はまったく伸びていないが、今回も悪くはなかった。西郷隆盛の生涯を描くのに不可欠な大久保利通との決別を、信念と信念のぶつかり合いとして描いたからだ。大久保らが日本を留守にしている間、国内情勢はいまだ安定せず、国民の間には不満が募っていた。使節団は西郷に「新しいことは何もするな。人事にも手を付けるな」と念を押して日本を旅立ったが、残された西郷は民衆の不満を見捨てておくことができず、江藤らと次々に新しい政策を実現させる。それが国益になると信じたからだ。

 だが、欧米の文明の力をまざまざと見せつけられた大久保は、欧米に追い付くことこそが政府の今なすべきことであると唱え、そのためには強権の発動もやむを得ないと主張する。民衆と共に暮らし、民衆に寄り添う姿勢を貫く西郷は、「民衆の声に耳を傾ける政治」を追求し、欧米列強の力を見せつけられた大久保は「まず国力を付けるべき」と考える。この2人の政治姿勢は、どちらかが絶対に正しくて他方が間違っているとは言えない。どちらも必要なことであり、一方だけで国が成り立つわけではないだろう。

 それなのに、西郷と大久保はどちらも「自分の信念こそが正しい」と信じ込み、相手の言い分を理解しようとしない。「どちらも同じくらい正しい」ゆえの対立がそこにある。細かい流れが史実と違うとの指摘はもちろんあるが、どちらも悪くないのに決別してしまうという悲しい運命を描くドラマとしては、十分な構成だったのではないだろうか。

『西郷どん』をずっと視聴してきた視聴者の間でも、明治編になってからの評判はそこそこ良い。複雑な部分を簡略化したうえで人間関係の変化をわかりやすく再構成しており、人間ドラマとしてかなり見やすくなっているからだ。歴史も描けなければ人間も描けていなかった幕末編とのあまりの変容ぶりに「密かに脚本家が交代したのではないか」との声すらあるほどだ。

 いずれにしても、『西郷どん』もわずかな回しか残されていない。決別した両雄の心が通い合うことはもう二度とないのか、西郷は何を思って最期を迎えるのか、最終回までしっかりと見守っていきたい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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