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欅坂46の写真集は大ヒットでも、平手友梨奈初主演『響 -HIBIKI-』がさほど興行的によくなかったのはなぜか?

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『響 -HIBIKI-』公式サイトより

 欅坂46の写真集が、発売前から18万部以上を発行することが話題になっている。乃木坂46と並び、今もっとも勢いがあるアイドルグループであることは間違いない。だが、その少し前(今年9月)に公開された、欅坂46のセンターである平手友梨奈主演の映画『響 -HIBIKI-』が興行成績にも話題性としてもパッとしなかった。

 長年にわたりAKBグループや坂道シリーズをウォッチし造詣も深い、反権力ニュースサイト「TABLO」編集長・久田将義氏が、オトナのための映画を紹介していく不定期連載第3弾では、この『響 HIBIKI』がいまいちヒットにつながらなかった理由について語ってもらった。

平手友梨奈が演じる平手友梨奈

 本作はトップアイドル欅坂46の不動のセンター、「笑わないアイドル」(正確には「途中から笑わなくなったアイドル」ですが)平手友梨奈がほとんど「笑わないまま」ヒロインを演じます。
 
 冒頭に指摘しておきますが、あまりに役に「はまり過ぎ」の感がしました。つまり「平手友梨奈を平手友梨奈が演じた」わけです。よく言われる「キムタクは何を演じてもキムタク」現象に近いものがありました。

 平手が演技をすれば上手であろうことは、PVやデビュー当時にテレビで時折見せていた、バラエティへの適応力で推測できます。実際、本作品でも新人賞を取るくらいの力を発揮しました。平手友梨奈を初めて見た人は、この映画の平手友梨奈に惹かれるでしょう。僕も『不協和音』のPVを初めて見て、「この子の存在感はスゴイ」とファンになったほどですが、PVを全部チェックしている側としては、残念ながら本作にはキャスティングの意外性が感じられませんでした。次回以降、平手友梨奈の平手友梨奈から脱却した演技を見てみたいと思いました。

 この作品の見方はふたつに分けられます。

 ストーリーは単純です。基本、世間の評判やしがらみなどまったく気にしない、狂気をはらんだ天才女子高生作家・鮎喰響の文学への対峙の仕方を描いていき、芥川賞・直木賞に挑戦していくのが本筋です(ネタばれになるので結果はクエスチョンで)。そこに親友、担当編集者、先輩作家、週刊誌ジャーナリストが響と相対します。彼ら、彼女らは響の凄まじいまでの文学へ情熱と純粋さを目の当たりにしてショックを受け、後に理解していきます。
 
 作品の見方のひとつは、「言葉に責任を持て」という点。冒頭、映画『キャスト・アウェイ』(2000年)そのもののカメラワーク。天才少女作家・鮎喰響15歳の暴れっぷりをひたすら描いた映画と見ることができます。友達がイジメられたら、躊躇なくイジメた奴を殴ります。蹴ります。男の先輩に胸倉をつかまれ「殺すぞ」と凄まれると、ためらいもなく彼の指を折ります。理由は「殺すって言われたから、殺されないようにした」。誤解を恐れずにいえば、この言葉には共感を覚えます。

 SNS上でも汚い言葉が飛び交っています。「死ね」「殺す」etc。それらの言葉を発する人は、言葉の重みなど実感していません。もし響のような人間がいたらという想像力が欠如しています。実際、アウトローの人間が、掲示板などの書き込みがきっかけで揉め事を起こし、相手の自宅まで行った例もあります。言葉は魂です。だから響も言葉一つひとつに覚悟を抱いています。これは映画を観た方にはぜひ、感じてほしいと思いました。

「小説」「作家」という物語の土台がおろそかに

 もうひとつは作家の心情。

 僕は雑誌の編集長を10年くらい務めました。現在はネットニュースの編集長ですが、基本、ノンフィクションを掲載しています。同じ書き物とはいえ、小説とノンフィクションはまったく別物と思ってください。小説誌の編集者と話していると、つくづくそう感じます。ノンフィクション作家が小説家に転じることは間々あります。しかし、成功例は多くありません。筆力がないのではありません。ジャンルが違うのです。思考コードが違うのです。仕方ありません。事実をひたすら追うノンフィクションと、ゼロから(モデルとなった作品は1から)物語を創作する力は、まったくの別物です。

 ノンフィクションの分野の僕としては、響たち作家の能力と、それをコントロールする担当編集者には頭が下がります。

 ここからが問題なのですが、こういった作家の苦悩、編集者の努力というものが映画には反映されていませんでした。尺が短いのかもしれませんが、それでも映画『バクマン。』(2015年)は漫画家の創作の苦悩と生き残りのエグさを描きました。それを考えると残念です。平手友梨奈をどう演じさせるかに重きを置きすぎて、この物語の土台をおろそかにしてしまったのではないでしょうか。

 ですから見どころは、「平手友梨奈の初主演作」というところに尽きる映画です。

 キャスティングでいえば、脇役は素晴らしかったです。高嶋政伸は狂気じみた悪役が多いのですが、今回のようなきちっとした大手出版社の編集長役は僕は好きです。アヤカ・ウィルソンの明暗を分ける表情も良かったです。

 結論をいうと、僕は面白いと思った映画は2回以上は見てしまいますが、『響 -HIBIKI-』は1回でよかったかなと思いました。とはいえ、平手友梨奈初主演に関しては、おおむね成功したと思います。平手友梨奈という才能を、本人のキャラクターとは違う役で生かした次回作を見たいと感じました。
(文=久田将義/TABLO編集長)

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