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榎本博明「人と社会の役に立つ心理学」

乳幼児期の自己コントロール教育、大人時の収入増に影響…知的学力より非認知的能力が重要

文=榎本博明/MP人間科学研究所代表、心理学博士
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 この実験では、子どもたちを2つのグループに分けた。ひとつのグループの子どもたちは、3歳から2年間、平日毎日、午前中に幼稚園に通い、初歩的な幼児教育のプログラムや遊びを中心とした活動に従事した。さらに、週に1回、その親は先生から家庭訪問を受け、子どもたちの様子について、また発達や教育のあり方について話し合う機会を持った。これには子どもにとって重要な教育環境でもある親の意識を高める意味があったといえる。

 もうひとつのグループの子どもたちは、とくに何も介入を受けなかった。

 その結果どうなったかというと、介入を受けた子どもたちのIQは著しく伸びた。これは予想通りのことといえる。

 ただし、その伸びは長続きしなかった。2年間の介入終了後は、徐々に両グループの差は縮まり、8歳時点では両グループのIQにほとんど差がなくなっていた。そうなると、幼児期の教育的介入には意味がないということになる。

 ところが、40歳になったときの状況を調べると、介入を受けた子どもたちのほうが、高校卒業率、収入、持ち家比率などが高く、離婚率、犯罪率、生活保護受給率が低いというように、大人になってからの人生における成功率が高いことがわかったのだ。

 ヘックマンは、こうしたデータをもとに、乳幼児期において重要なのは、認知的能力(いわゆるIQや勉強の成績のような知的能力)ではなく、非認知的能力をしっかり身につけることだと結論づけた。

非認知的能力が学業成績を後押しする

 このように幼い頃に非認知的能力を身につけておくことが大切だということがわかってきた。

 ところで、文部科学省によって平成29年度に実施された全国学力・学習状況調査の結果と、その対象となった小学6年生および中学3年生の子どもたちの保護者に対する調査の結果を関連づける調査報告書がある。

 それによれば、子どもの非認知的能力と学力との間には、ゆるやかな正の相関がみられる。つまり、非認知的能力が高いほど学力が高く、非認知的能力が低いほど学力が低いといった傾向がみられた。

 さらには、親の学歴や収入といった社会経済的地位と学力との間には、中程度の正の相関がみられる。つまり、親の学歴や収入が高いほど子どもの学力が高く、親の社会経済的地位が低いほど子どもの学力が低いといった傾向がみられた。

榎本博明/心理学博士、MP人間科学研究所代表

榎本博明/心理学博士、MP人間科学研究所代表

心理学博士。1955年東京生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員教授、大阪大学大学院助教授等を経て、MP人間科学研究所代表。心理学をベースにした執筆、企業研修・教育講演等を行う。著書に『「やりたい仕事」病』『薄っぺらいのに自信満々な人』『かかわると面倒くさい人』『伸びる子どもは○○がすごい』『読書をする子は○○がすごい』『勉強できる子は○○がすごい』(以上、日経プレミアシリーズ)、『モチベーションの新法則』『仕事で使える心理学』『心を強くするストレスマネジメント』(以上、日経文庫)、『他人を引きずりおろすのに必死な人』(SB新書)、『「上から目線」の構造<完全版>』(日経ビジネス人文庫)、『「おもてなし」という残酷社会』『思考停止という病理』(平凡社新書)など多数。
MP人間科学研究所 E-mail:mphuman@ae.auone-net.jp

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