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『黄昏流星群』全員不倫の“砂上の楼閣”は日本の一般的な中高年の家庭を見事に描写

文=吉川織部/ドラマウォッチャー

 連続テレビドラマ『黄昏流星群』(フジテレビ系)の第6話が15日に放送され、平均視聴率は前回から0.2ポイント減の6.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だった。このドラマは、融資先に出向になった元銀行員・瀧沢完治(佐々木蔵之介)と、認知症の母親を介護しながら孤独な人生を送ってきた目黒栞(黒木瞳)を中心に、人生や恋に葛藤する男女を描く作品だ。

「人生や恋に葛藤する男女」と言えば聞こえはいいが、完治は結婚間近の娘がいるにもかかわらず栞と逢瀬を重ね、第6話の冒頭でついに男女の関係となった。しかも、2人とも喪服を着たまま結ばれるという、ちょっとマニアックなおまけつきである。

 一方、弁護士の日野春輝(藤井流星/ジャニーズWEST)と婚約している美咲は、大学時代に世話になった教授・戸浪恭介(高田純次)と不倫していることが明らかになる。しかも、その関係は春輝も認めていた。病気の母・冴(麻生祐未)が元気なうちに結婚式を挙げたいとの思いがあり、互いの事情をわかったうえで結婚するから問題ないのだ、と春輝は美咲の母・真璃子(中山美穂)に告げた。

 まあまあ、わからないではない。と思ったのもつかの間、春輝の口から「僕にもほかに好きな人がいます」と爆弾発言が飛び出した。「そうなの?」と驚く真璃子に「あなたですよ。僕が好きなのは真璃子さんです」と、気持ち悪い笑顔を向ける春輝。もうすぐ結婚しようとしているカップルの双方が別に好きな人がいて、しかも男のほうは婚約者の母親が本命というメチャクチャな展開である。

 視点を完治の家族に移してみれば、両親と娘の一家3人がそろって道ならぬ恋に足を踏み入れているというヤバイ状況だ。しかも、父と娘は互いの秘密を知っており、妻も夫の浮気に気づいている。それでいて全員一様に表面上を取り繕い、何事もないかのように日常が過ぎていく。完治の家族は、絶妙なバランスの上に成り立っている砂上の楼閣のようなものなのかもしれない。

 しかし、考えてみれば、実際には破綻寸前なのに何事もないかのように、ただ日常を過ごしていく砂上の楼閣のような家族は、世の中にいくらでもありそうだ。「うちは違う」と胸を張って言える人は案外、少ないのではないだろうか。このドラマ、エピソードのひとつひとつはバカバカしかったり、あり得なかったりするのに、それをどんどん積み上げたら一周回って「中高年のあるある」に回帰するという構成が、実によくできている。

 それでいて笑いどころも多く、毎回かなり視聴者を楽しませてくれる。挙げればキリがないが、今回はラストシーンにだけ触れたい。会社で事故に遭い入院した完治は、見舞いに来た娘の美咲を「先生とはもう別れなさい。そろそろけじめをつけなさい」と諭す。もう結婚間近なのだから、そろそろ潮時だろうという意味だ。美咲もそれは自覚していたのか素直に応じるが、ひとつだけ条件を出した。「お父さんもあの人と別れて」というのだ。

「それはもっともだ」と、視聴者の誰もが思ったに違いない。偉そうに道徳だか倫理だかを娘に説いておきながら、自分は不倫を続けるという話はないだろう。完治だって、そこまでの覚悟を持って娘を諭したに違いない――と思ったら、さにあらず。「えっ、マジで?」みたいな虚を突かれた顔をしていた。さすがにこれは笑わずにはいられない。冷静に考えるとなかなかのクズ親なのに、思わず笑いが先に来てしまったせいで、そこまで不快感がない。案外よく練られた脚本だと思う。

 視聴率こそ低迷しているが、ネット上には「ありえねーと言いながら見るのが楽しい」「ついつい見てしまう最高のクソドラマ」「ツッコミを入れながら見ていると、1時間があっという間」など、好意的な声が多い。直近の比較では、『黄昏流星群』より3.5ポイントも視聴率が高い『獣になれない私たち』(日本テレビ系)ではこうした声がほとんどないことに比べれば、視聴者の満足度は『黄昏流星群』のほうが勝っているのかもしれない。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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