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AIの本当の危険性、AIでまったく前進していない大きな問題

取材・文=大野和基/ジャーナリスト
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 相手が知らないという前提に立てば、会話が楽になります。今日起きている、対話での多くの対立や、アメリカをはじめほかの国とのculture war(文化戦争)は、我々がほかの人も自分が知っていることを知っていると期待しているという事実と関係しています。あるいは、自分がものをみる視点と同じ視点を相手にも期待するということと関係しています。ほかの人は経験が異なるので、知識ベースも異なります。ですから、自分の視点からみると彼らは無知かもしれませんが、彼らの視点からみると我々は無知です。ですから、我々が知っていることを彼らが知るべきであるという理由は何もありません。

 我々は、知識というものをコンピュータのビットと同じように考える傾向にあります。貯蔵庫に入れてそこに置いてあるような感覚で知識をとらえがちですが、人間はそのように知識を取り扱いません。人間にはframes of reference(価値判断や行動などの枠組み)があり、perspectives(視点)もあります。また人間はストーリーを語ります。我々の知識は束として存在します。心理学者が言うschema(スキーマ)です。原因や結果を持ち、モチベーションを与えたり、将来を予測したりする、構造化されたユニットになって存在しています。

 ですから、我々が誰かを無知であると言うときは、往々にして日本の首都を知らないとかそういうことではなく、その人は我々とは異なるストーリーがある、我々とは異なる世界観を持っているという意味です。それは無知であるということではなく、単に視点が異なるということなのです。
(取材・文=大野和基/ジャーナリスト)

スティーブン・スローマン教授 認知科学者。ブラウン大学教授(認知・言語・心理学)。「Cognition(認知)」誌の編集長を務める。”The Knowledge Illusion”(直訳は“知識の錯覚”翻訳版である『知ってるつもり―無知の科学』(早川書房)の共著者。

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