
この秋、流通業界で勢力地図が塗り替わる事態が起こり、いよいよ激動の業界再編の幕が開こうとしている。
ドンキホーテホールディングス(HD)はユニーの株式を取得して子会社化し、同時にユニーファミリーマートHDの親会社である伊藤忠商事がドンキHDの株式を20%取得した。ドンキHDとユニーの年間売上は1兆6000億円となり、イトーヨーカ堂を抜いて、スーパー首位のイオンリテールの2兆1978億円に次ぐ2位に浮上、ユニーファミリーマートHDとしては4兆7000億円に達し、イオン、セブン&アイHDに次ぐ巨大流通グループが誕生することになる。
ディスカウントのドンキHDは業界の異端児でアウトサイダー、ユニーは中京地区を地盤とする大手スーパーで老舗といってもいいメインストリーム、いわば下剋上の合併劇である。ドンキHDは29期連続増収増益で、8000億円企業にまで成長した新興勢力だが、一方のユニーは近年、業績が低迷し経営再建に取り組んできた。2016年9月、ファミリーマートと経営統合し、2017年11月にはドンキHDとも資本・業務提携を行った。
そして、今年2月から3月にかけて、GMS(総合スーパー)の「アピタ」「ピアゴ」6店舗を、ドンキHDのノウハウを導入した「MEGAドン・キホーテUNY」に業態変更し、改装後の半年間の売上が1.9倍となった。
「ユニクロ」や「ニトリ」といった有力専門店の台頭で客離れが進んだGMSが、ディスカウントという荒療治で見事再生を果たしたわけだが、来期も20店舗でこの業態変更が予定され、さらにドンキ化が進む。遅かれ早かれドンキHDに吸収されるとみていたが、今回ユニーがドンキHDの子会社になり、予想以上に早い流れになった。
ドンキHDはウォルマートが売却するといわれている西友の店舗にも興味を示しており、さらなるM&Aの可能性もあり、規模拡大も予想される。
ドンキHDは、スーパーの本部主導の中央集権的なチェーンストアオペレーションとは真逆の「顧客最優先主義」に基づき、現場に権限がある「主権在現」を掲げて、店舗に権限を委譲し、仕入れや運営を任せる個店主義を貫いてきた。狭い空間に商品を積み上げる「圧縮陳列」や、手書きPOPの洪水、ジャングルや迷路のような売場で「ワクワク・ドキドキの買い場」にし、エンターテイメント性を重視した店づくりで、Eコマースの利便性と対抗しようとしている。