
前回の記事で、アマチュアスポーツ界における組織上層部によるパワハラ問題や、独裁的な経営がされている組織などにおける不祥事など一連の騒動は、氷山の一角にすぎず、日本社会全体に“組織の金属疲労”が起きているのではないかと指摘しました。そして、そうした日本の組織で起きている事象は欧米のトップスクールで教えられているネットワーク分析の理論(以下、ネットワーク理論)とプラットフォーム戦略®を学ぶことでより深く理解できると指摘しました。
ここまでM・グラノヴェッターの「弱い紐帯の強さ(“The strength of weak ties”)」、シカゴ大学ビジネススクール教授のロナルド・S・バートの「構造的空隙の理論」「ネットワーク密度」「構造同値」「ランダムネットワーク」と「スケールフリーネットワーク」等についてご紹介してきました。今回は「ネットワークの中心性」と「ハブ」についてです。拙著『世界のトップスクールだけで教えられている 最強の人脈術』(KADOKAWA)からご紹介しましょう。
誰が中心か?4つのネットワーク中心性

ある組織において、最も影響力のある人物、あるいは重要な人物とは、どのような人でしょうか。会社であれば、社長や会長などが頭に浮かぶかもしれません。しかし、本当にその組織で重要な人物とは、じつは現場の工場長であったり、ミドルクラスの課長であったりするわけです。あなたが今いるポジションによっても、それは変化することでしょう。
みなさんが持っている人脈ネットワークにおいて、中心的な存在とは誰でしょうか。SNSなどで友だちの多い人や、ツイッターなどでフォロワーが多い人は、たしかに中心的な存在、あるいは目立つ人という印象があるかもしれません。しかし、必ずしもつながりの数が多い人が重要であるとはいえないことも明らかでしょう。
たとえば、今A社の社長に会いたいと思っている人にとっては、A社の社長と仲のよい人こそが重要な人物であり、その人がSNSでどれだけ人気者かどうかについては関係がありません。このように「中心性」にはさまざまな考え方があるわけです。
ネットワーク理論では、個人の資質や能力はいったん脇に置いて、その人の人間関係、すなわち人脈ネットワークでのポジションにこそ、その存在価値があると考えます。そして、「ネットワーク中心性」という考え方は、人脈ネットワーク内で最も中心的な存在は誰か、ということを測定するために開発された指標です。