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LIXIL、創業家・御曹司の“ご乱心”経営…2代連続プロ経営者クビ、自身がCEO復帰で株価下落

文=編集部
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藤森義明と瀬戸欣哉、2代続けてプロ経営者を招く

 自分が経営者に向いていないと自覚していた潮田洋一郎氏は、資本と経営を分離するため、有能なプロ経営者を探した。そこで目をつけたのが、米ゼネラル・エレクトリック(GE)出身の藤森氏だ。アジア人として初めてGE経営陣の一翼を担った「プロ経営者」という触れ込みだった。

 典型的な内需型企業を大変身させ、海外売上高1兆円を稼ぎ出すグローバル・カンパニーに育て上げる――。それが、潮田氏が藤森氏に与えたミッションである。そこで藤森氏は海外M&Aに打って出た。

 だが、藤森氏は“十八番”の海外M&Aで躓いた。14年にドイツの水洗金具大手、グローエを4109億円で買収したが、グローエの中国子会社、ジョウユウに巨額の簿外債務があることが判明。LIXILは662億円の大損失を被った。

 買収先の不正会計の処理に追われたLIXILグループは、16年3月期に256億円の最終赤字に転落した。指名委員会の委員を務める潮田氏は、その経営責任を問い藤森氏を更迭。後任に住友商事出身で、工具のネット販売会社MonotaRO(モノタロウ)を創業し、東証1部に上場させた瀬戸氏に白羽の矢を立てた。

 2016年、潮田氏は三顧の礼で招いた藤森氏のクビを切り、起業家である瀬戸氏を新たに迎え入れた。当時、潮田はこんなことを言っていた。

「瀬戸さんは現場を知り、泥くさいところがいい」

 GE仕込みの米国流ビジネスパーソンの藤森氏をあてこすったような物言いで瀬戸氏をベタ褒めしていた。その後、瀬戸氏は藤森氏の海外拡大路線を修正し、不採算事業を整理。18年3月期決算(国際会計基準)で、純利益が545億円と過去最高を記録した。

 しかし、両者の蜜月関係はここまでだった。

 トップの交代と同時に発表されたLIXILの18年4~9月期決算では、最終赤字が86億円になった。イタリアの建材子会社の中国企業への売却が、米国の対米外国投資委員会(CFIUS)から承認を得られなかったためだ。

 売却する予定だった子会社は、藤森氏が11年に600億円で買収した外壁材などを手掛ける伊ペルマスティリーザ。藤森氏のグローバルM&A路線の象徴的な案件である。売上高は1600億円規模だが、業績が振るわず赤字で、昨年、中国のグランドランド社への売却を発表した。ペルマスティリーザは米国売上が4割を占め、納入先にはニューヨークのワンワールドトレードセンターなど著名な建造物が多い。“米中貿易戦争”の最中にあって、米当局が中国企業の買収に待ったをかけた。これにより売却計画が頓挫したため、中間期の決算は赤字に転落した。

 さらに通期の業績見通しも下方修正した。19年3月期の連結純利益は、当初予想の500億円から15億円(前期比97%減)に引き下げた。ペルマスティリーザの売却で、今期は赤字がなくなる計画を立てていたが、売却の承認が得られなかったためペルマスティリーザの赤字235億円が純利益を押し下げる。

 それだけではなく、既存事業も新築着工件数の落ち込みや海外での新商品の発売遅延が響き、純利益が当初予想より62%減の250億円にとどまる見込み。まさに内憂外患の状態だ。

 そこで、プロ経営者の瀬戸氏のクビを切り、潮田氏がCEOに復帰したわけだ。そして再び、海外M&Aに経営の舵を切るという。

 潮田氏が古典芸能に造詣が深い粋人であることは誰もが認めるところだが、“経営の達人”という評価は、寡聞にして聞かない。潮田氏が経営トップに復帰するLIXILグループの今後の動向が注目される。
(文=編集部)

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