小早川隆治「日本のクルマづくり~さらなる志・凛・艶・昂を目指して~」

日産「セレナ」がe-POWER投入でミニバンのベストセラーに躍り出た理由

日産の「セレナe-POWER」(「日産:セレナ e-POWER 新登場 – 日産自動車」より)

 日産自動車「ノート」は2016年11月のマイナーチェンジ時に追加されたe-POWERが好評を博し、今やe-POWERが販売の60%を占め、コンパクトカーのベストセラーの位置を確保している。

 そのe-POWERの第2弾として導入されたのが、「セレナe-POWER」だ。セレナもe-POWER導入後、ミニバンのベストセラーとなっている。e-POWERを一言でいえば、エンジンで発電してモーターだけで走る「発電機式電気自動車」で、充電の心配がなくモーターのみで継続して走行できるのが大きなメリットだ。

「車評オンライン」より

 セレナe-POWERは、基本的にはノートe-POWERと同じモーター、同じ1.2L3気筒エンジンを活用(ただし、いずれも出力は向上)、1.8kWhのリチウムイオンバッテリーをフロントシート下とセンターコンソール下に分けて搭載、モーターとエンジンはエンジンルームに収まっている。価格帯はSハイブリッド車/ガソリン車の約244万~301万円に対して、e-POWERは約296万~343万円と決して高くない。

ブレーキを踏む動作が70%も減少

 セレナは3列シートコンパクトミニバンで2駆と4駆があるが、e-POWERは今のところ2駆(前輪駆動)のみだ。モーターのため静止状態から最高トルクで駆動が可能なので、1.7トンを超えるクルマを実に爽快に加速してくれる上に非常に静かだ。静かさはモーター駆動が最大の要因だが、遮音膜をはさんだフロントグラス、新構造の遮音材を採用したセンターカーペットなど随所に配慮がなされており、走行中にセカンドシート、サードシートの人たちとのコミュニケーションが容易なことは大きな魅力だ。

 ECOモードとSモードで可能なワンペダルドライブは、アクセルペダルを戻すことにより0.15Gまでの減速をしてくれるため、いったん慣れると運転が楽で楽しいだけでなく、通常のクルマに比べてブレーキを踏む機会が70%も減るという。

 私も市街地と高速道路の約100kmを走行したが、ほとんどブレーキを踏まなかった。雪上や氷結した路面での走行時にブレーキではなく回生で減速できるため、タイヤスリップを防げることのメリットも大きいはずで、日産には積雪地帯での事故率の統計を取ることをおすすめしたい。実測燃費は、高速道路が約9割の約250kmの走行では17.2km/Lとカタログ値(26.2)をかなり下回ったが、市街地走行の比率がもっと高い場合は、これよりかなり良い燃費になることは間違いない。

 セレナの外観デザインは突出しているとは言えないが好感の持てるもので、e-POWERの差別化のためにフロントグリルにブルーのアクセントを入れるとともに、専用デザインのホイールとリアサイドスポイラーの設定などをしている。内装デザインも機能性とデザインの両立を図ったもので大変好感が持てるが、最大の魅力はパッケージングの良さと使い勝手だ。3列目シートの居住性が良好な上に、2列目は2人掛けのキャプテンシートなので非常に快適だ。ウィンドー部分だけを跳ね上げられる二分割のバックドアにより狭い空間での小物の出し入れも容易だし、随所に設置された小物収納スペースも便利だ。

「車評オンライン」より

 ただし、セレナe-POWERに注文がまったくないわけではない。総じて非常に乗り心地が良く静粛だが、住宅地などでの低速の凹凸路での突き上げが少し気になるのと、粗粒路におけるロードノイズはもう一歩だ。また、ミラーの全幅が広く、狭い道路では左側の通行人が気になった。ミラー自体のサイズを変えずに、片側20mmから30mm程度出っ張りを少なくするだけで安心感は大幅に向上するはずだ。

小早川隆治/モータージャーナリスト

1941年生まれ。学習院大学卒業後、東洋工業(現マツダ)に入社。RX-7&モータースポーツ担当主査、北米マツダ副社長などを務める。退職後、モータージャーナリストとして活動。日本自動車研究者ジャーナリスト会議監事。

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