
お笑いタレント・久保田かずのぶ(とろサーモン)と武智(スーパーマラドーナ)が“関西お笑い界の大御所”上沼恵美子を批判した件が、大きな波紋を呼んでいる。
2日に放送された“日本一の漫才師を選ぶ祭典”『M-1グランプリ2018』(テレビ朝日系)で審査員を務めた上沼の審査が、個人的な“好き・嫌い”のみに基づいてなされているとの不満を、久保田と武智が爆発させたことが発端だ。
上沼は同番組内で、自身がファンだと語るミキに98点の高得点をつけ、「(ミキの)ファンだな。ギャロップの自虐(的なネタ)と違って突き抜けてる」とコメント。このとき、同じく審査員を務めていた松本人志(ダウンタウン)は88点の評価を下しており、大きな違いが出た。ほかにも、「ジャルジャルはファンなんですが、ネタは嫌いや」「未来のお笑いって感じかな。私は歳だからついていけないや」など、個人の感覚だけで判断しているかのようなバッサリと切り捨てる発言が目立った。
「上沼が自分の好みで採点したり、思ったことをズバズバ発言するのは、今に始まったことではありません。むしろ、それが“上沼節”であって彼女のセールスポイントです。かつてはそれで良かったのですが、M-1のステータスが上がり、視聴者の求めるところも変わってきたことを考えると、審査に客観性を持たせるような配慮を、番組制作側がする必要があったのではないかと思いますね。たとえば、オリンピック競技などで採用されているような、審査員の評価のうち最高点と最低点を切り捨てるといった方法です。そうすれば、恣意的な評価はある程度防げるはずです」(放送作家)
放送終了の数時間後、武智は芸人たちの飲み会の様子を自身のインスタライブで配信。そのなかで、久保田が「酔ってるから言いますけど、(審査員を)そろそろもうやめてください」「自分目線の、自分の感情だけで審査せんといてください」「お前だよ、一番お前だよ。わかんだろ、右側のな」とクダを巻いた。それに追随するかたちで武智が「嫌いですって言われたら、更年期障害かと思いますよね」などと上沼を批判。動画はすぐに削除されたが、インターネット上に瞬く間に拡散され、大きな話題になった。
一方、批判を受けた上沼は3日放送のラジオ番組『上沼恵美子のこころ晴天』(朝日放送ラジオ)内で、「私みたいな年寄りが、あんなところにちょこんと座って偉そうにしてる場合じゃないんですよ。だから私は引退します、審査員を」と、番組審査員からの引退を宣言した。
騒動の拡大を受けて4日、時を同じくして久保田と武智は自身のツイッターで上沼への謝罪コメントを投稿したが、これに対しても賛否両論が巻き起こり、収束の気配はみえない。
とろサーモンは干されるのか
そんななか吉本興業が運営する「なんばグランド花月」が4日、「お詫び」として17日に出演予定だったとろサーモンが「都合により休演」すると発表したことから、「吉本がとろサーモンとスーパーマラドーナを活動休止にするのではないか」との憶測が飛び交っている。とろサーモンとスーパーマラドーナが所属するよしもとクリエイティブ・エージェンシーは吉本興業グループの芸能事務所であるため、吉本の本社が事態を重く見てとろサーモンの出演を見合わせたと見る向きが多いようだ。
「吉本の関係者に聞くと、とろサーモンの休演は以前から決まっていたもので、今回の騒動とは関係ないとのことです。ただ、ライブのキャンセルは吉本内部で簡単に調整できることですが、今後テレビ出演がキャンセルされるようなことがあれば、大ごとになっていると判断できます。また、急遽、若手芸人向けの“コンプライアンス研修”が実施されることになったようで、幹部の間では今回の騒動について重要に受け止めているとみられます」(芸能記者)
マーケティングコンサルタントでネットの危機管理について詳しい西山雄基氏は、インターネット上で久保田らを攻撃する声が拡大していることについて、懸念すべき点があると指摘する。
「一連の騒動では、久保田と武智が上沼を批判したことの是非のみが議論されていますが、複数の問題点がごちゃ混ぜになっています。
1点目は『上沼の審査』についてです。上沼の審査が個人的感情に基づいており、恣意的な採点をしていたという指摘は視聴者からも数多く上がっており、上沼も番組側も反省すべき点があるのは事実です。その事実を指摘する声が上がること事態は問題ないでしょう。
2点目は『久保田と武智が上沼を批判したこと』についてです。出演者が審査員を批判するのは、“暗黙のルール”としてタブーです。スポーツ選手が審判を批判した場合、しばらく出場停止処分を受けたりするのと同様、ある程度の処罰はやむを得ないでしょう。とはいえ、当事者ならではの不満があるだろうことは、多くの人が心情的には理解できるところだと思います。
3点目は『武智の“更年期障害”発言について』です。これは有無を言わせず“アウト”な発言です。理性的な判断ができていない→更年期障害という短絡的な思考に基づく女性蔑視的発言といえ、弁解の余地はありません」
こうして整理してみると、久保田と武智は処分されるべきか、その場合はそれぞれどのような処分が適当なのか、ある程度は見極められるのではないだろうか。今後の彼らの動向を注視したい。
(文=編集部)