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「加谷珪一の知っとくエコノミー論」

アマゾンが政治都市ワシントンに本社建設の理由…国家権力と一体化するネット企業

文=加谷珪一/経済評論家

 アマゾンは多数のロビイストと契約しており、政治権力との調整に日々追われているのが実状だ。また、アマゾンが提供するクラウド・サービスは、国防総省など安全保障の分野にも急速に拡大しており、軍や諜報機関との関係も密接になってきた。国防総省の本部は同じヴァージニア州にあり、電子諜報の総本山であるNSA(国家安全保障局)も近隣のメリーランド州にあるが、当然、人の行き来も活発になっているだろう。

 アマゾンのような企業は、下手をすると、かつてのスタンダード石油(ロックフェラー氏が創業した巨大石油企業)やAT&Tのように独占禁止法によって解体させられるリスクすら出てきている。米国の権力中枢であるワシントンD.C.とニューヨークに拠点を構えるのはもはや必然といってよい。

ジャック・マー氏が引退を表明した理由

 
 同じような現象は、共産党による独裁国家である中国においても発生している。ネット企業の影響力があまりにも大きくなりすぎたため、権力中枢とのバランスを取ることが難しくなっているのだ。

 今年の9月10日、中国最大級のネット企業アリババの創業者ジャック・マー氏が突然、引退を表明し、世界中を驚かせた。マー氏はもともと教師だったこともあり、教育という仕事にもう一度携わりたいというのが引退の理由だが、これを額面通りに受け取る人はいない。

 マー氏が引退を表明したのは、中国の権力機構との関係があまりにも密接になったことが原因とされている。

 アリババはもともと電子商取引サイトとして成長してきたが、近年は金融分野にも進出。アリペイという決済サービスは中国における標準的な決済インフラのひとつとなった。今では、店舗での支払いはもとより、納税や年金、公共料金の支払いなど、ありとあらゆる決済がアリペイで行われている。

 しかもアリペイは、利用者の取引履歴などからAI(人工知能)が個人の信用を数値化し、融資に活用するという「芝麻・信用」というシステムを開発。中国の大多数の国民の信用情報をデータベース化するという、とてつもないことを一気にやってのけた。

 中国は共産党による独裁国家であり、政府は国民を監視するため「天網」と呼ばれる個人認証システムを全国各地に張り巡らしている。監視カメラなどの映像をシステムがリアルタイムに分析し、犯罪者やテロリスト予備軍、反体制活動家などを即座に追跡できるというものだが、天網の完成によって中国人の顔情報はすべて公安当局が把握できる状況となった。

加谷珪一/経済評論家

加谷珪一/経済評論家

1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『教養として身につけたい戦争と経済の本質』(総合法令出版)、『中国経済の属国ニッポン、マスコミが言わない隣国の支配戦略』(幻冬舎新書)などがある。
加谷珪一公式サイト

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