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小笠原泰「日本は大丈夫か」

日産ゴーン逮捕、東京地検特捜部へ世界から批判…西川社長ら「逮捕なし」は不自然

文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授
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日産、ガバナンスの欠如が露呈

 ここまでの経緯をみてくると、今回の件は当初からゴーン氏の逮捕が目的だったのではないか。
 
 しかし、そもそも金融取引法違反で、司法取引は成り立つのであろうか。虚偽記載の事実は客観的に明らかなので、司法取引の対象となる「捜査協力」が考えられないため正式な司法取引はできないという見解もある。憶測であるが、この背景には、マスコミでいわれているように特捜部が早々にゴーン氏を背任罪か横領罪で立件ができると踏んでいたのかもしれない。

 だが、今後は取締役と監査役が個人として、株主から委託された善管注意義務違反を問われるのではないか。日産の起訴に加えて、完成検査での不正が発覚したことも加えて、主に海外の株主の目が、日産のガバナンスとコンプライアンスのレベルの低さに向かう可能性がある。これは、日産をルノーの植民地から解放した英雄でありたい西川社長にとっては“パンドラの箱”であったかもしれない。

 事態は企業としてガバナンスやコンプライアンスが機能していない日産を利用したゴーン氏の逮捕の様相を呈してきており、西川社長の思惑と離れて、問題の本質は日産にあることに向かいつつあるのではないか。実際、海外の投資家からみれば、ゴーン氏個人より日産のほうがはるかに大きな問題だろう。それゆえ、「自浄作用がない日産は、通常のガバナンスに基づいてゴーン氏を追い落とすことができないので、特捜部の力を借りてクーデタを起こした」と指摘されるのである。

 長きにわたりルノーと連合を組んでグローバル化したと思われていた日産ですら、企業体質は東芝と同じであったという事実は、日本企業のガバナンスとコンプライアンスに対する信頼のいっそうの低下につながる可能性がある。これは、ゴーン氏を解任させることで日産を守ったと考えているかもしれない経済産業省などの政府にとっては、想定外の展開ではないか。

 次回は、今回のゴーン氏逮捕に政府は本当に関与していないのかを状況証拠的に検証してみたい。
(文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授)

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