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上昌広「絶望の医療 希望の医療」

山形大学医学部、女子合格率が男子の半分以下…国立大医学部の調査をしない医学界の闇

文=上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長

 ただ、これは異様だ。大学の意志決定機関は理事会である。当然だが、受験対応は理事会マターである。単科の医科大学では、医学部長が理事会を仕切っていることもあろうが、総合大学は違う。医学部長だけで医学部受験のやり方はきめられない。

 東京大学では、医学部長は理事会のメンバーですらない。また、東京大学の受験生は一旦、教養学部に入学するため、入試対応は教養学部の教員が中心となる。医学部長が独断で理科三類の入試のあり方を変えることはできない。理科一類と工学部、理科二類と理学部、農学部などの関係を考えれば、ご理解いただけるだろう。

 いったい、医学部長たちはどのような議論を経て、今回の声明に名を連ねたのだろうか。それぞれ所属する組織で議論し、機関決定したのだろうか。学問と組織運営は違う。学問は大いに自由に議論すべきだが、組織決定は所定の手続きを経なければならない。大学という組織の中間管理職にすぎない医学部長が、個人の資格で徒党を組んで、外部に発表することは、まともな大人のやることではない。

医学部のガバナンス改革が急務

 第二は、なぜ、女性差別について、国立大学を調査しないかだ。医学部入試では、国公立大でも男女の合格率に大きな差があったことが知られている。ハフィントンポストによると、2018年度の入試で、女子の合格率が男子の半分以下だった大学が6つ存在し、このうち3つは国立(山梨、岐阜、新潟大学)だった。この数字は異様だ。多くの読者は、女性受験生差別があったと考えるだろう。

 また、今回の記者会見には、2人の山形大学関係者が出席した。山下英俊・医学部長と嘉山孝正・山形大医学部参与だ。10月19日に河北新報は、以下のように報じている。

「山形大医学部の男女の合格率格差は過去6年間の平均で1.29倍と東北の国公立大医学部の中で最大だった。単年度では2015年度に女子の合格率がわずかに上回り0.95倍となったが、13年度には全国79国公私立大で最大の1.99倍となっていた。」

 山下氏、嘉山氏がまずやるべきは、自らが所属する大学を調査し、その結果を公表することだ。第三者による調査が望ましい。そして、他の大学にも検証を呼び掛けることだ。

上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長

上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
医療ガバナンス研究所

Twitter:@KamiMasahiro

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