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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

インフルエンザだけじゃない!自己判断での「下痢止め」は危険?冬の感染性胃腸炎の恐ろしさ

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
インフルエンザだけじゃない!自己判断での「下痢止め」は危険?冬の感染性胃腸炎の恐ろしさの画像1「Getty Images」より

 インフルエンザの感染が拡大しているが、この時期、増加する感染症はインフルエンザだけではない。感染性胃腸炎も、冬の11月~翌2月の時期にもっとも多く発生することを知っていただきたい。また、感染力が強く広がりやすい感染性胃腸炎の特徴を知り、この冬を乗り切っていただきたい。

感染性胃腸炎とは

 感染性胃腸炎の症状には吐き気・嘔吐、腹痛、下痢、発熱があるが、その原因によりウイルス性胃腸炎と細菌性胃腸炎がある。

 ウイルス性胃腸炎は、ウイルス感染が原因であり、冬はノロウイルス、ロタウイルスの感染が多い。ノロウイルスでは、嘔吐・下痢の強い症状が2日ほど続き、その後終息する。ロタウイルスでは、初期症状に39度台の高熱が見られ、嘔吐・下痢が起きるが、解熱し嘔吐が収まった後も下痢だけが1週間前後、続くことがある。ロタウイルスに感染すると、便がレモン色~白っぽくなるのが特徴的だ。

 一方の細菌性胃腸炎は、細菌感染が原因であり、一般に食中毒と呼ばれる。病原性大腸菌では、O-157が過去の集団食中毒などでよく知られているが、そのほかにもカンピロバクターやサルモネラ菌などによる食中毒も多い。

 ウイルス性胃腸炎は、感染者との接触をはじめ、感染者が触れたタオルや食器などに触り、その手で飲食をしたり口などを触ることで感染する。ノロウイルスでは、生牡蠣や二枚貝を十分に加熱せず食べた場合や、感染者が調理しウイルスが入り込んだ食品を食べることで感染することもある。細菌性胃腸炎の主な感染経路は、細菌が付いた食品を食べることで感染するほか、井戸水からの感染なども例がある。

 風邪の治療でもよくいわれることだが、ウイルスには抗生物質は効かない。したがってウイルス性胃腸炎の治療には抗生物質は使用せず、嘔吐・下痢による脱水がある場合は水分補給や点滴、発熱・腹痛には解熱鎮痛剤を服用し、それぞの症状を緩和する対症療法を行い回復を待つ。嘔吐・下痢が続くうちは、無理に食事をしても体は受け付けず、かえって回復が遅れることもある。脱水を防ぐために経口補水液をこまめに取るようにしてほしい。

 一方の細菌性胃腸炎の治療には、感染した細菌を特定した後に抗生物質を投与するのが順当だが、細菌の特定には便培養検査に2~3日を要するため、菌が特定された頃には症状が回復していることもある。

 ウイルス性胃腸炎、細菌性胃腸炎ともに、避けていただきたいのが自己判断での「下痢止めの服用」である。下痢止めにより排便を止めてしまうと、ウイルスや細菌を体外に排出できず、思わぬ悪化を招くこともあるので、速やかに医療機関で受診してほしい。

 ウイルス性胃腸炎、細菌性胃腸炎ともに、手洗いや消毒の励行が予防には有効である。近年、アルコール除菌製品が多く販売されているが、ウイルス性胃腸炎に対しては、アルコール除菌では不十分だ。流水による手洗いを十分にしてほしい。同様に食器や調理器具の消毒には、塩素系漂白剤がオススメである。

 手洗い・うがいはインフルエンザの予防にも有効であり、ぜひ毎日の習慣にしていただきたい。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。福島県立医科大学薬理学講座助手、福島県公立岩瀬病院薬剤部、医療法人寿会で病院勤務後、現在は薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

吉澤恵理公式ブログ

Instagram:@medical_journalist_erie

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