つまり、京王線の進行方向変更は安全のためのもので、小田急線側も通知を受けてはいたが、エスカレーターをはじめとする設備の変更が難しいため右側通行には対応できなかったということのようだ。
鉄道会社側にも事情があることはわかるが、混乱が起きているのも事実。もっとうまい手順はなかったのだろうか。鉄道ライターの杉山淳一氏に話を聞いた。
京王井の頭線の右側通行は、むしろ今できる最善策のひとつ
今回の件を考えるうえで、まず下北沢駅の工事について知っておく必要があると杉山氏は語る。
「工事以前の下北沢駅は、1階部分に小田急線、2階部分に京王井の頭線の線路が走るかたちで、かつて京王井の頭線は小田急電鉄の路線であったため、その名残で下北沢駅では改札を通らずとも2線間の乗り換えが可能でした。
しかし小田急線は1989年より、東北沢駅~和泉多摩川駅間の線路を4本に増やす『複々線化』に取り組んでいます。下北沢駅も2004年から工事が開始し、地下1階を小田急の緩行線路が、地下2階を急行線路が走るかたちに改装されています。京王井の頭線は従来通り地上2階部分を使い続けるので、空いた地上1階を通り抜け可能な通路にするとともに、小田急線、京王井の頭線の改札を新設し、完全に分離しよう、というのが現在行われている工事です」(杉山氏)
その改装工事の余波が京王井の頭線エリアの進行方向変更につながり、結果として不満が噴出しているということか。しかし、もっとほかに手の打ちようはなかったのだろうか。
「京王電鉄もアナウンスしている通り、工事途中の現段階では、小田急線ユーザーと京王井の頭線ユーザーがどこかで交錯せざるを得ない状況にあります。確かに、進行方向を変更しなければ今のような不満は噴出しなかったでしょうが、その場合は階段・エスカレーター下が交錯場所となってしまい、重大な事故につながる危険性があったわけです。
それなら小田急線も右側通行にすればいいじゃないかと思うかもしれませんが、2019年3月に予定されている工事終了に伴い、混雑も解消すると考えられています。それまでの半年足らずのために6台あるエスカレーターの動作や、駅構内の案内板などをすべて変更することのほうが、むしろ現実的ではありません。
また、両社は混雑の対策として警備員を配置し、利用客の誘導を促すようにしています。今回の件は、小田急と京王が一体的な管理を行わなかったことによる問題というわけではなく、むしろ現状でなせる最善策といっていいかと思います」(同)