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牧野知弘「ニッポンの不動産の難点」

都心のタワーマンションやオフィスビルの価値がなくなる日…働き方改革→通勤不要の衝撃

文=牧野知弘/オラガ総研代表取締役
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「オフィス」がいらない

 
 ところが最近は三井不動産のみならず多くの大企業の働き方が変わった。フリーアドレス制が採用されて自分の固有の机がなくなり、勤務時間も必ずしも9時から17時まで働く必要がなくなった。テレワークといって会社にはやって来ずに自宅や自宅近く、あるいは取引先の近くのサテライトオフィスで仕事をする人が増えた。

 コワーキング施設も大はやりだ。コワーキング施設は、その施設の会員がオフィスを自由に使えるというもので、中で会議や打ち合わせをしたり、一人で仕事をすることも可能だし、チームで一緒に目標達成まで会社から離れて仕事をすることも可能だ。会員企業の社員が自由に出入りするので、いわゆるサテライトオフィスとは異なるものだ。
 
 また、こうした施設は、当初はスタートアップ企業のためのシェアオフィスのようなものと考えられていたが、この認識は改めたほうがよい。日本に上陸した米国のWeWorkや三井不動産が展開するWORKSTYLINGの会員の多くは大企業というのが実態だ。

 企業側にとってオフィス経費は重たい固定費だ。社員が増えるほどに毎日使いもしない会議室スペースを持ったり、ほとんどの時間外出している社員のために机と椅子を用意するのははっきりいって経費の無駄だった。これをコワーキング施設で働いてもらうことで、今までの固定費が変動費に振り替わることになる。また同じ施設内で他社の社員とも交わることができるので、新たな発想やイノベーションのヒントが得られたりする期待も高まる。企業にとっては結構良いことづくしなのだ。

 知り合いのある大手製造業の若手社員は、一週間のうち会社に出社するのは1、2日程度、しかも9時から17時まで会社の机にずっと座ることはないという。彼は自宅近くのコワーキング施設で働き、夕方は子供を保育園に迎えに行き、そのまま自宅に帰ることも多いそうだが、業務に支障が出たことはないという。ちなみに彼のカバンの中身を一度みせてもらったことがあるが、中にはパソコンや情報端末機器がぎっしり詰め込まれていた。

「これさえあれば、どこででも仕事はできますよ」

 彼にとっての会社は単なる所属体であり、何もそこに出かけていく必要のある場所ではないということだった。最近は平日の昼間にスターバックスやタリーズに行くと、広いデスクでパソコンを叩く社員が多いことに気づく。コワーキング施設の会員にならずとも、世の中では自由な場所と時間を使って仕事をする勤労者が確実に増えていることを実感する。

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5:30更新
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